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蒼穹のファフナー文章(ときどき絵)サイト
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END OF THE WORLD8
爆発によって立ち上る煙で視界はほとんど遮られている崩れ掛けたビルの中を
総士は早足で周りを確認しながら歩く。
破壊された壁の隙間から覗く空はここ数日では見ないほど晴れていて、
どこか陰鬱とした屋内に少しだけ明るい光を差している。
不意に部下の声が聞こえて振り向くと、そこには地面にうずくまった女と
その女を庇うように手を広げる少年の姿が見えた。
あれが今回の実行犯だ、と数時間前に見せられた写真と一致する顔に総士にも緊張が走る。
発見次第、殺すことを命じられていたからでもあった。
すぐさま女のもとに駆け寄ると、すでに部下がもう女に銃口を向けている。
しかし、その前にいた少年が口を開いた。

「アルヴィスは怪我人を、助けもしないで殺すんですか?」

一騎だった。
なぜこんなところにいるのかと総士は唇を噛みしめる。
一騎はデータ上では一般人ということになっているから、
アルヴィスが彼を傷つけることはあってはならない。
けれど、この時間にこの場所に、一般人が入りうる可能性は限りなくゼロに近いことは
作戦前の情報でも解っていたことであり、それでもここにいるということは、
それは何かしらの関係を持っているのだろうと再度疑うには十分すぎることだった。
未だ女に向けられたままの銃口を一騎は突然掴んで自分の額に向けると、
「なぜ、俺は殺さないんですか?」と聞く。
しまった、と思った時には遅かった。
一騎の問いかけの返答に困った部下の隙をついて、女が素早く立ち去ってしまったのだ。
負傷していて、しかもかなりの出血量だからと相手を甘く見てしまっていた。
すぐさま後を追いかける部下の後ろ姿を見ながら総士はまだ地面に座ったままの一騎に言った。

「どういうつもりだ?」

「何が?」

「ここがどこかわかっているんだろう?」

「勿論」といって口元に笑みを浮かべた一騎を総士は睨みつける。
でも一騎はそんなことは全く気にも留めない様子で言葉を続けた。

「自爆テロが起こった不幸な町の片隅のビル、まだ昼間だからここには
一般人が絶対にいないという予測は外れた、俺は一般人でしょう?たまたま居合わせただけなんだけど」

「その自爆テロの実行犯をなぜ庇う?」

「怪我人は殺すものじゃなくて助けるものだって学校で教わったから」

「一騎」

「それとも、すぐに殺さなきゃいけない理由があったの?」

一瞬返答に詰まった総士の目を一騎はまっすぐ見つめて、追い打ちをかけるようにまた問いかける。

「自警組織を称するアルヴィスは、本当は何をしているの?」

「お前…」

「何?」と言って見上げる一騎に総士は顔をしかめると静かに尋ねた。

「僕達が追いかけている組織と何か、関係があるのか?」

「どうだろう」

「笑いごとじゃない!」

声を荒げた総士を一騎は見て堪えきれないように肩を震わせて笑い出す。
その様子がなんだか自分の知っている一騎とはまるで別人のようで、
総士は思わず足が竦みそうになるのを必死で堪えた。

「だって総士の必死な顔、すっごい久しぶりに見た」

そう言って一騎はまた笑い出す。

「僕を、からかっているのか?」

「違うよ、ただ」

急に笑うのを止めて一騎は総士の目をじっと見つめる。
そして、さっきまでとは違うまるで消えそうな声で小さく呟いた。

「あの時終わりにしようと思ったのに、もう一度だけ顔が見たくなっちゃったんだ」

ごめんね、と最後に言って一騎は右足を庇うように立ち上がるとくるりと総士に背中を向けて歩き出す。
かける言葉どころか相手に見えもしないのにどんな表情をしたらいいのかすらわからなくて、
総士は両手の拳をぎゅっと握りしめた。

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