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蒼穹のファフナー文章(ときどき絵)サイト
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END OF THE WORLD7
「一騎」

部屋に入るなり操は一騎に声を掛ける。
乱れたシーツにくるまっていた一騎はその声で眠りから覚めたのか、
何度か瞬きをしながら操の方を見つめると、「操、何で?」と掠れた声で呟いた。

「携帯、連絡取れなかったから」

「ごめん」

「起きなくていいよ」

そう言って操は一騎の横たわるベッドの側まで行くと、そのまま縁に腰掛けた。
シーツからはみ出て投げ出された四肢や無造作に広がる黒髪に、
操はついさっきまで行われていたであろう行為を思っては一騎を見て目を細める。
不意に合わさった視線に一騎は一瞬驚いたような表情を浮かべては、すぐにまた眉根を寄せた。

「ねぇ、操」

「何?」

「俺、ほんとに何もなくなっちゃった」

そう言った一騎の両目にはみるみるうちに涙が溜まり、今にもこぼれそうだと思う。
いつもならそれを拭うのは操の役目だったが、今日はあえてそれをしなかった。
代わりに、一騎に向かって静かに口を開く。

「でも、一騎がそれを望んだんでしょう?」

「それは…そうだけど」

口ごもった一騎を見て操は少し表情を緩めると、腕を伸ばして一騎の肩にかかったシーツに手をかけた。
びくりと肩をすくめた一騎に構わず少しだけシーツを下げる。

「総士は、どんな風に抱いたの?」

言いながら操は、むき出しになった一騎の肩に手を滑らせた。

「あんな顔してるけどさ、意外と変態だったりして」

わざと口元に笑みを浮かべて一騎を見れば、
彼は少し戸惑うような怯えたような複雑な表情を浮かべて操を見つめる

それを見た操は、もうちょっとだけなら困らせてもいいかな、なんて思ってしまう。

「いっぱい、泣かされた?」

「ちが…」

思いの外早く返ってきた言葉に今度は操の方が少し驚きながら、
でもすぐにいつものような穏やかな笑みを浮かべた。

「だよね、でも、本当はすごく泣きたかったでしょ?」

「こんな優しく、まるで恋人みたいに大事に抱かれたら」

そう言って操は一騎の肩から鎖骨の上へと撫でるように手を滑らせて、
そこにだけ唯一残されていたキスマークの上で止めると少しだけ爪を立てる。

「痛っ…」

「これが消える頃までには、忘れることだよ、一騎」

身体を屈めて一騎の上に覆い被さると、操はそのまま一騎の唇に自分の唇を重ねた。
不意の口付けで少し開いた口の隙間から舌を侵入させると、
そのまま優しく撫でるように一騎の舌を絡めとる。
空いた片手を一騎の髪に差し込んでゆっくりと梳きながら更に深く舌を絡めれば、
鼻に抜ける甘さを含んだ声が一騎から漏れ聞こえ始めた。

「辛いのは、今だけ。今日よりも明日、明日よりも明後日、そうやって時間が経てば、
だんだん痛くなんてなくなるから」

ゆっくりと唇を離して操が囁けば、一騎は名残惜しそうに潤んだ目を操に向ける。

「大丈夫、一騎は強いから」

「だから今は、いっぱい泣いていいよ」

操はまた優しく微笑んだ。
が、操を見つめる一騎は両目を見開く。

「なんで、操が…泣くの?」

微かに震えながら告げられた声に、今度は操が驚く番だった。
気付けば自分の頬に涙が伝っていて、「ごめん」と操は小さく呟いた。

「本当はね、一騎は、総士と一緒に行っちゃうんじゃないかって、
もう戻ってこないんじゃないかって…すごく不安だった」

「そんな…」

「でも、そうじゃなくてよかった」

そう言って操が微笑むと、一騎は投げ出したままだった腕を伸ばして操の頬に触れた。

「一騎?」

「俺には、操しかいないんだ」

まるで呟くように弱く言ったかと思うと、今度は一騎の両目から堪えきれなくなった涙が溢れ出す。
泣きながら一騎は操に微笑みかける。
その笑顔がとても儚く見えて、操は思わず一騎を強く抱きしめた。

「もうほんとに、操しかいないんだ」

操の耳元で一騎の微かな声が聞こえた。

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