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蒼穹のファフナー文章(ときどき絵)サイト
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Dear,my friend2
「空の話をしたんだ」

総士は言って、空を見上げた。一騎も同じように頭上を見上げる。
雲ひとつない透き通るような青空がどこまでも広がって、まるで海と繋がってしまったかのようだった。
その溶けて混ざり合うような感覚に、一騎は懐かしさと、少しだけ寂しさを覚える。

「毎日毎日、僕の所に来てはずっと楽しそうに言ってたよ」

一騎が総士を見ると、総士は笑った。

「空がとっても綺麗だって」

一瞬その目が揺らいだのは、やっぱり寂しいと思っているんだろうか、総士も。
視線を戻したその先には、さっきと同じように空も海も境界線が解らないくらいに青く広がっている。

「また、会えるのかな」

ぽつりと、一騎はつぶやいた。
あそこに行けば、とは言わなかった。

「今はまだ、会えないよ」

総士の手が一騎の手の上に重なる。そのままぎゅ、と力を込めるのがわかる。
たとえあの向こうで空と海が繋がっていたとしても、たぶんそこに、彼はいない。

「今日の空も、綺麗だね」

誰にでもなく、一騎は言った。なんだか泣きたい気持ちになった。









「あれ、総士先輩と一騎先輩」

背後から声がして振り返ると、虫かごをいっぱいぶら下げた芹がいた。

「今日も、あれ…」

「ミヤマクワガタ、何度言えばわかるんですか、一騎先輩」

「ごめん」

別にいいですって、と笑って芹は総士と一騎の少し後ろに腰を下ろす。
聞けば、相変わらす芹はこの山にクワガタを採りに来ているらしい。
誰に見せるのかなんて野暮な事は聞かないけれど、毎日採ったクワガタ達はどこで飼っているのか。
ものすごく大きな虫かごが必要なんじゃないかな、などと一騎はとぼけた考えを巡らす。

「泣いてたんです」

突然、虫かごを見つめながら芹が口を開いた。

「とっても苦しんでた、ひとりで、ずっと」

そこまで言って芹は顔を上げた。一騎と目が合って、少しだけ微笑む。
そして空を見上げる。そのまま海の向こうへと視線を移す。
ちょうど、空と海が曖昧になるあの辺りを、芹は静かに見つめていた。

「空と海が繋がってなくてもまた会える、そんな気がするんです」

そう言って、芹は微笑んだ。
一騎は、芹が誰のことを言っているのかわかった気がした。
芹が作ったというフェストゥム達の墓標に目を移す。
彼女がコアの代替を務める前に作られた墓標の数は、その後増やされてはいない。

「今度会えたら、いっぱいクワガタ見せてあげようと思うんです」

「そっか」

「一騎カレーには、負けちゃうと思いますけど」

「そんなことないって」

「あんな笑顔見せてくれるのかなぁ、ってやっぱり思っちゃいますよ」

あんな笑顔、というのはたぶん全島民に操と史彦の対話を中継した時に操が見せた笑顔のことだ。
「一騎カレー」なんて単語が彼の口から出たことにも驚いたが、「おいしい」とあんな笑顔を見せた操に
フェストゥムもカレーは美味しいって思うのか、となんだかまたずっとぼけた感想を一騎は抱いていた。

「じゃあ、行きますね」

「ああ」

「あ、総士先輩は一騎カレー食べました?」

「ああ、こないだ」

「それだけ?」

「え?」

「もっとこう、美味しかったとか…」

眉をハの字にして口を尖らせる芹とびっくりしている総士の顔を交互に見て一騎はぷっとふき出した。
総士から感想なんてそんな器用な言葉が出るはずないじゃないか、と心の中で思ったりする。
けれど芹はそんな総士の一面を知らないので、「美味しいって、こないだちゃんと聞いたから」と一騎は告げた。
それを聞いてほっとしたのか、「じゃあ、今度はほんとに行きます」と芹は笑ってその場を後にした。

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