蒼穹のファフナー文章(ときどき絵)サイト
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星に願いを 最終話(後編)
2012.06.16 Saturday
「こんな所にいたのか」
背後から聞き慣れた総士の声がして、一騎は振り返った。
いつもの表情、なんだか最近見慣れてしまった感じの。探しに探してやっと迷子を見つけた親のような。
思えば、迷惑をかけて心配させて、そんな事ばかりだったな、なんて思う。
「あと1年で、乗れなくなるんだ」
だけど口を開いて出てきた言葉は全然違うものだった。
「お前は、お前だから」
「ファフナーが俺を、俺にしてくれたんだ!」
思わず総士の言葉を遮るように叫んだ。
「ファフナーがなくても」と続けるつもりだったんじゃないかな、と思う。けれどそれは今一番欲しい言葉でもあるかわりに、今一番聞きたくない言葉でもあった。
どうしてなのかはわかるようでわからない。それが上手く言葉に出来たら、自分にとって総士はこれほど重要な存在ではなかったかもしれない。
「前にも、言ったことあったっけ?」
できるだけ普通な振りをして言った。総士があまりにも心配そうな顔をしていたからだ。
「フェストゥムの中身ってさ、キラキラしてすごい綺麗だって。フェストゥムだからなのかなって思ってた、ずっと。でもさ、そうじゃなかったんだ」
涙がこぼれ落ちそうになるのをぐっと堪えた。頭が混乱してきて、真っ白に塗り潰されていくような、とても変な感じがする。
「殺しすぎて麻痺してきたのかな?」
暉の顔が浮かんで、すぐに消えた。
「そうだとしたら、まだマシなのかもしれないけど」
一旦言葉を切って、小さく深呼吸をした。総士の表情を伺おうと思ったけれど、結局できなかった。
「人間も、同じなんだ」
たぶんきっと後ろめたい気持ちなんだろうな、とも思った。
「すごい、綺麗なんだ。キラキラしてて、見とれるくらいの」
一騎はぎゅっと拳を握りしめる。言ってはいけない事を言ってしまったかのような。罪悪感なんて他人行儀な言葉じゃ到底片付かない程のドロドロと渦巻く何かが身体中をゆったりと巡り始める。
「もっと見てみたいって、思い始めてるんだ」
全身から汗が噴き出す、歯がガチガチと音を立てそうになる。
総士にこの気持ちはわかるのだろうか。
何も聞かない総士の顔を見ることすらできない。
「もう俺は、俺じゃなくなり始めてる。もしかしたら、これが本当なのかもしれないけど。俺は、今ここにいる俺は、それを認めたくなんてない。乗らなければ、こんな感情は消えるんだと思う。でも、ファフナーに乗らない俺も俺じゃない」
何を言っているのか、自分でも全然わからない。
「けど、乗るほどに俺はどんどんいなくなる」
ぜえぜえと、一騎は肩を上下するほどに呼吸を乱した。いつのまにか堪えていたはずの涙が溢れてぐちゃぐちゃの泣き顔になっていた。
本当の気持ちなのかもわからない、けれど言葉にする精一杯の現状だった。
「だがまた乗るんだろう?一騎」
突然、総士が口を開いた。
「今敵が来たら、ザインに乗って出撃する、それがお前の答えなんだろう?」
俯いていた顔を上げた。初めて総士と目が合った。
そこにはいつもの総士がいて、それはなんだかうれしいようで少し悲しくなるような指揮官の顔だった。
「お前が聞きたいのは、俺自身の気持ちじゃないだろう?」
総士の目が少し揺らいだ。それだけで十分だった。
「そう…だね」
一騎は総士の目を見て言った。なんだか不思議な気持ちだった。
喉元まで出かかっていた言葉をぐっと飲み込んだ。この先もたぶん言うことはない。
その時、けたたましく敵の襲来を知らせるサイレンが鳴り響いた。
背後から聞き慣れた総士の声がして、一騎は振り返った。
いつもの表情、なんだか最近見慣れてしまった感じの。探しに探してやっと迷子を見つけた親のような。
思えば、迷惑をかけて心配させて、そんな事ばかりだったな、なんて思う。
「あと1年で、乗れなくなるんだ」
だけど口を開いて出てきた言葉は全然違うものだった。
「お前は、お前だから」
「ファフナーが俺を、俺にしてくれたんだ!」
思わず総士の言葉を遮るように叫んだ。
「ファフナーがなくても」と続けるつもりだったんじゃないかな、と思う。けれどそれは今一番欲しい言葉でもあるかわりに、今一番聞きたくない言葉でもあった。
どうしてなのかはわかるようでわからない。それが上手く言葉に出来たら、自分にとって総士はこれほど重要な存在ではなかったかもしれない。
「前にも、言ったことあったっけ?」
できるだけ普通な振りをして言った。総士があまりにも心配そうな顔をしていたからだ。
「フェストゥムの中身ってさ、キラキラしてすごい綺麗だって。フェストゥムだからなのかなって思ってた、ずっと。でもさ、そうじゃなかったんだ」
涙がこぼれ落ちそうになるのをぐっと堪えた。頭が混乱してきて、真っ白に塗り潰されていくような、とても変な感じがする。
「殺しすぎて麻痺してきたのかな?」
暉の顔が浮かんで、すぐに消えた。
「そうだとしたら、まだマシなのかもしれないけど」
一旦言葉を切って、小さく深呼吸をした。総士の表情を伺おうと思ったけれど、結局できなかった。
「人間も、同じなんだ」
たぶんきっと後ろめたい気持ちなんだろうな、とも思った。
「すごい、綺麗なんだ。キラキラしてて、見とれるくらいの」
一騎はぎゅっと拳を握りしめる。言ってはいけない事を言ってしまったかのような。罪悪感なんて他人行儀な言葉じゃ到底片付かない程のドロドロと渦巻く何かが身体中をゆったりと巡り始める。
「もっと見てみたいって、思い始めてるんだ」
全身から汗が噴き出す、歯がガチガチと音を立てそうになる。
総士にこの気持ちはわかるのだろうか。
何も聞かない総士の顔を見ることすらできない。
「もう俺は、俺じゃなくなり始めてる。もしかしたら、これが本当なのかもしれないけど。俺は、今ここにいる俺は、それを認めたくなんてない。乗らなければ、こんな感情は消えるんだと思う。でも、ファフナーに乗らない俺も俺じゃない」
何を言っているのか、自分でも全然わからない。
「けど、乗るほどに俺はどんどんいなくなる」
ぜえぜえと、一騎は肩を上下するほどに呼吸を乱した。いつのまにか堪えていたはずの涙が溢れてぐちゃぐちゃの泣き顔になっていた。
本当の気持ちなのかもわからない、けれど言葉にする精一杯の現状だった。
「だがまた乗るんだろう?一騎」
突然、総士が口を開いた。
「今敵が来たら、ザインに乗って出撃する、それがお前の答えなんだろう?」
俯いていた顔を上げた。初めて総士と目が合った。
そこにはいつもの総士がいて、それはなんだかうれしいようで少し悲しくなるような指揮官の顔だった。
「お前が聞きたいのは、俺自身の気持ちじゃないだろう?」
総士の目が少し揺らいだ。それだけで十分だった。
「そう…だね」
一騎は総士の目を見て言った。なんだか不思議な気持ちだった。
喉元まで出かかっていた言葉をぐっと飲み込んだ。この先もたぶん言うことはない。
その時、けたたましく敵の襲来を知らせるサイレンが鳴り響いた。
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