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蒼穹のファフナー文章(ときどき絵)サイト
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星に願いを8
「一騎、一騎…!」
総士の声と身体を強く揺さぶられる動きに一騎ははっと目を覚ました。
目の前にはとても心配そうな表情を浮かべた総士の顔。
そしてその右手がこちらへと伸びてきたかと思うと、ゆっくりと一騎の顔を撫ぜる。
同時に、指の腹からぬるりとした液体の感触。
まただ、と一騎は思う。また自分は泣いていた。

「大丈夫…か?」

おそるおそる総士が尋ねる。けれど一騎はそれに答えることが出来なかった。
かろうじて口からもれ出たのはたったの一言だけ。

「また…」

また、あの夢を見たのだ。



その夢を見始めたのは確か一ヵ月前の雨の降る夜だった。
最初は、湿気のせいで寝苦しいだけなのだと思った。
汗ばんだ首筋を拭うように動かした右手をシーツに放ったと思った瞬間、
一騎はその異変に気付く。
少したわんだ布が触れるはずだった手のひらには生温かい液体の感触。
それが何なのかを考える暇などなかった。
驚いて咄嗟に目を開けた先に待っていたのは、おびただしい数の人間の顔だった。
その顔に見覚えなどない。名前も知らない、どこの誰だかもわからない大勢の人間。
その全てが、何かを言いたそうに口を開けてはこちらをじっと見ている。

「なんだよ、これ」

一騎は呟いた。
そろそろと一騎は上半身をベッドの上に起こす。
近づくわけでも遠ざかるわけでもない無数の顔。
何かを言っているかのように見えるのに、一向にその声は聞こえることがない。

「嫌…だ、きえろ…」

一騎はぎゅっと目をつむって下を向いた。
これが夢か現実なのか一騎には判断がつかなかった。
夢だ、きっと今日の戦闘で疲れたからこんな変な夢を見ているんだ。必死にそう思った。

「消えてくれ」

そう小さく呟き続けてどれだけ時間が経ったのかわからない。
周りの空気が少しだけ軽くなったような気がして一騎はそっと顔を上げた。

「きえ…た?」

まるで何事もなかったかのようにあの無数の顔は全てきえていた。
一騎はほっとして大きな息をひとつ吐いた。
けれどその時、わずかに動かした右手に触れた生温かいもの。
そっと裏返すと、その手のひらは血で真っ赤に染まっている。




「一騎っ…僕がちゃんと見えるか?」

「…あ」

一騎は何度か瞬きをすると、やっと総士の目を見つめた。
目が合ったかと思いきや、ぐい、と強く掴まれた肩を起こされる。そのまま、抱きしめられる。

「大丈夫、お前は何も悪くないから」

一騎の髪を梳きながら静かに総士は言った。

「全部、仕方のないことなんだ。お前のせいじゃない」

総士が繰り返す。耳元から血管を伝って身体のすみずみにまで染み渡るような感覚。
なんだかまるで悪い呪文のようだと一騎はぼんやりとした頭で思う。
総士が言えばいつだってそれは正しいのだと。
頭で解るより先に身体が反応する。総士が言うのなら、

「大丈夫、俺は」

かすれた声で一騎は呟いた。
そうだ、きっとあれは昂ぶった神経と疲れた精神が見せたたちの悪い夢なのだ。
目が覚めれば全てが消える夢。
あれは全部嘘で、現実はここなのだと、身体に触れる総士の感触で確認する。

「大丈夫だから」

もう一度、まるで自分に言い聞かせるかのように一騎は言った。
総士は何も答えず、一騎の身体をさらに強く抱きしめる。
その瞬間、

かすかに耳元に触れた。総士の唇は何か言葉を形作っていた。
けれどそれが音になって一騎の元には届かなかった。

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