蒼穹のファフナー文章(ときどき絵)サイト
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星に願いを6
2011.12.01 Thursday
ふぅ、と一騎は静かに大きく息を吐き出した。
ゆっくりと両手を開いてまた固く閉じる、それを繰り返す。
「大丈夫、俺は」
自分にしか聞こえない声で呟くと、一騎はメディカルルームを出た。
そっと通路へと足を踏み出す。部屋の中よりも証明が落とされたそこはひんやりと暗い。
シュン、と音がしてドアが閉まった瞬間、背後から声がした。
「本当に、出るのか?」
総士だ。振り返らずともわかる。
「さっき、メディカルチェックのデータはお前のとこにも転送されたはずだろ?」
わざとそっけなく言い放つ。
データ上の自分はもうとっくに正常だ。異常を知らせる数値などひとつもない。
「でも」
「戦闘におけるパイロットの出撃命令に私情を挟むのか?」
指揮官らしくない物言いだと思う。
そんな事など言ってはいられないほど戦況は甘くはないのだ。むしろ刻一刻と悪化している。
同時に、それほどまでに自分を気遣ってくれる総士に対しての嬉しさもこみ上げる。
けれどそれは、今は言わない。
「俺は、出るよ」
それだけ言って、一騎はその場を後にするつもりだった。振り返らずに。
「私情なら、お前の方だろう?一騎」
背後で総士が言った。不意をつかれた言葉に思わず一騎は振り返る。
「数値には表されないデータを読み取るのも、指揮官の仕事だ」
「数値に表れない…?」
総士の言った言葉の意図を掴みかねる。
「誰かを庇って戦うのは、今のお前には危険すぎる」
静かに、でも真っ直ぐ一騎を見つめながら総士は言った。
一騎はくるりと向きを変えると早足で通路を歩き出す。
向かう先は格納庫だ。また、総士が口を開いた。
「お前の気持ちもわかる、だから僕は、お前を止められはしない」
角を曲がる前にかろうじて届いたその声に、思わず一騎はまた振り返りそうになる。
何も、言い返すことなんて出来ない。ただただ早く、この場から去りたい、そう思った。
あの時総士が言っていたことは正しかったのたと、一騎は後になって思う。
3週間ぶりにザインが出撃した戦闘は、今までの比にならないほどの敵機が襲来した。
素早く動力部を破壊しても飛来する敵機を食い止めるのがやっとで、じりじりと防衛線に近づきつつある。
他のファフナーも疲労と戸惑いからか、迎撃に時間がかかっているようだった。
そんな中、一騎は自分の周りの敵を動作不能に陥らせると辺りを見渡す。
すぐさまゼロファフナーを見つけると、猛スピードっで敵機との間に割り込んだ。
けれどあまりにも至近距離すぎたからか、力を制御することが出来ない。
「一騎、せんぱいっ…」
里奈の声が聞こえたかと思った瞬間、目の前で大爆発が起こる。
ザインのルガーランスが敵機のコックピットに深く突き刺さり、そのまま敵機は跡形もなく爆発したのだ。
眼前の黒い爆炎を一騎は放心状態で見つめる。
数秒だか数分だかわからない沈黙の後、帰還命令が下ったのをやたら遠くに聞いた。
それからどうやって格納庫に戻ったのかは一騎自身もわからない。
ただ、気付いた時にはザインは格納庫の中で、コックピット内は暗転していた。
目を開けても闇しかない空間で、一騎はひとり泣き続けていた。
身体の震えはいつまで経っても治まらず、両腕で肩を抱きしめてもどうにもならない。
思わず叫び出しそうになった瞬間、外部から強制的にハッチが開けられた。
コックピット内に光が充満する。
「一騎」
総士の声がした。
眩しくて目を開けられないままの一騎は声のする方へと手を伸ばす。
その手を強く引き上げられたかと思うと、そのままぎゅっと総士に抱きしめられる。
「もう、大丈夫だから」
耳元で総士の声がする。
なぜだかひどく安心して一騎はまた涙を一筋流すと、総士の背中に両腕をまわした。
ゆっくりと両手を開いてまた固く閉じる、それを繰り返す。
「大丈夫、俺は」
自分にしか聞こえない声で呟くと、一騎はメディカルルームを出た。
そっと通路へと足を踏み出す。部屋の中よりも証明が落とされたそこはひんやりと暗い。
シュン、と音がしてドアが閉まった瞬間、背後から声がした。
「本当に、出るのか?」
総士だ。振り返らずともわかる。
「さっき、メディカルチェックのデータはお前のとこにも転送されたはずだろ?」
わざとそっけなく言い放つ。
データ上の自分はもうとっくに正常だ。異常を知らせる数値などひとつもない。
「でも」
「戦闘におけるパイロットの出撃命令に私情を挟むのか?」
指揮官らしくない物言いだと思う。
そんな事など言ってはいられないほど戦況は甘くはないのだ。むしろ刻一刻と悪化している。
同時に、それほどまでに自分を気遣ってくれる総士に対しての嬉しさもこみ上げる。
けれどそれは、今は言わない。
「俺は、出るよ」
それだけ言って、一騎はその場を後にするつもりだった。振り返らずに。
「私情なら、お前の方だろう?一騎」
背後で総士が言った。不意をつかれた言葉に思わず一騎は振り返る。
「数値には表されないデータを読み取るのも、指揮官の仕事だ」
「数値に表れない…?」
総士の言った言葉の意図を掴みかねる。
「誰かを庇って戦うのは、今のお前には危険すぎる」
静かに、でも真っ直ぐ一騎を見つめながら総士は言った。
一騎はくるりと向きを変えると早足で通路を歩き出す。
向かう先は格納庫だ。また、総士が口を開いた。
「お前の気持ちもわかる、だから僕は、お前を止められはしない」
角を曲がる前にかろうじて届いたその声に、思わず一騎はまた振り返りそうになる。
何も、言い返すことなんて出来ない。ただただ早く、この場から去りたい、そう思った。
あの時総士が言っていたことは正しかったのたと、一騎は後になって思う。
3週間ぶりにザインが出撃した戦闘は、今までの比にならないほどの敵機が襲来した。
素早く動力部を破壊しても飛来する敵機を食い止めるのがやっとで、じりじりと防衛線に近づきつつある。
他のファフナーも疲労と戸惑いからか、迎撃に時間がかかっているようだった。
そんな中、一騎は自分の周りの敵を動作不能に陥らせると辺りを見渡す。
すぐさまゼロファフナーを見つけると、猛スピードっで敵機との間に割り込んだ。
けれどあまりにも至近距離すぎたからか、力を制御することが出来ない。
「一騎、せんぱいっ…」
里奈の声が聞こえたかと思った瞬間、目の前で大爆発が起こる。
ザインのルガーランスが敵機のコックピットに深く突き刺さり、そのまま敵機は跡形もなく爆発したのだ。
眼前の黒い爆炎を一騎は放心状態で見つめる。
数秒だか数分だかわからない沈黙の後、帰還命令が下ったのをやたら遠くに聞いた。
それからどうやって格納庫に戻ったのかは一騎自身もわからない。
ただ、気付いた時にはザインは格納庫の中で、コックピット内は暗転していた。
目を開けても闇しかない空間で、一騎はひとり泣き続けていた。
身体の震えはいつまで経っても治まらず、両腕で肩を抱きしめてもどうにもならない。
思わず叫び出しそうになった瞬間、外部から強制的にハッチが開けられた。
コックピット内に光が充満する。
「一騎」
総士の声がした。
眩しくて目を開けられないままの一騎は声のする方へと手を伸ばす。
その手を強く引き上げられたかと思うと、そのままぎゅっと総士に抱きしめられる。
「もう、大丈夫だから」
耳元で総士の声がする。
なぜだかひどく安心して一騎はまた涙を一筋流すと、総士の背中に両腕をまわした。
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