蒼穹のファフナー文章(ときどき絵)サイト
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2024.11.22 Friday
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星に願いを4
2011.11.20 Sunday
「はぁっ…はぁっ…」
一騎は半身を起こしたベッドの上で、整わない呼吸に激しく顔を歪ませる。
鼓動だけがやけに大きく身体中に響いて、次第に目の前の景色がぼやけていく。
つけっぱなしのモニターは、さっきまで流れていた映像の再生が終わって一面が青く変わっていた。
「ダメだ、引き込まれるな」
まるで正気を保つかのように、一騎はぎゅっとシーツを握り締める。
「俺と同じにしちゃ…ダメなんだ」
ぽつりと、一騎は呟いた。
瞬間、頬に一筋の涙が流れる。シーツ滑り落ちて一粒のシミを作る。
こんな思いを味わうのは俺だけでいいのに、俺にはその資格があるのに、あいつに罪はないのに。
「ごめんな」
歯痒かった。
戦闘に出ることができず、ただ毎日皆が島のために戦っている様子を映し出すモニターを眺めるだけ。
叫んでも声は届くはずもない、仲間の機体が危機に晒されても助けに入ることもできない。
自由になる両手は、いつでも敵の攻撃を読んで次の一手を繰り出そうとしているのに。
気がつけばただ虚しく空中を彷徨わせているだけ。
そして力なく投げ出した両手をぼんやりと見つめては、モニターの音ばかりが勝手に耳へと流れ込む。
確かカウント2秒を残して、耳を劈くような爆発音。距離はたぶん、視認できないほど遠くだ。
パラパラと微かに聞こえる音に、また命が消えた、と一騎は茫然とする。
「悪いのは、お前じゃないんだ…暉」
一騎の目から再び涙が溢れた。同時に、メディカルルームのドアが開く音がした。
「一騎、どうした?」
総士の声だった。
一騎はゆっくりと振り向く。総士はベッドサイドへ駆け寄ると、一騎の肩をそっと抱き寄せた。
「大丈夫か?気分、悪いんだろう?」
耳元で総士が尋ねた。そのまま、するりと伸びてきた右手に前髪を掻き揚げられる。
その感触が心地よすぎて思わず一騎はぼーっとしてしまう。そしてまた一筋、涙が流れる。
「みんな無事だから」
唐突に総士は言って、一騎が手にしていたリモコンを取り上げるとモニターの電源を落とした。
そしてモニターを見つめる一騎の視線を逸らせるように自分の方を向かせる。
「お前が心配するようなことは、ないから」
総士は言った。一騎の目を見つめたまま。
けれどなんだかとても頼りない、か細い声がと一騎は思う。
見つめた先の総士の目の奥が、微かに揺らめいたような気がした。
一騎は大きく息を吸って静かに吐き出すと、瞬きをひとつして総士を見上げた。
「あいつは…暉は、人間を殺すことに快感を覚えてる」
突然口を開いた一騎に驚いたのか、総士は目を見開いたまま何も言わない。
「暉が悪いんじゃない、けど…ダメだ、あいつを戦闘に出すのは、そしたらもう…」
「一騎、こんな言い方が適切じゃないことくらい解ってる。でもゼロファフナーがいなければ今の戦力では」
「ダメだ!」
「わかるだろう?一騎、今の戦力ではゼロファフナーがいなければ敵に太刀打ちできないことくらい」
「でも、このままじゃ暉が」
「じゃあ、お前が代わりに戦うとでもいうのか?」
そこまで言って、総士は一呼吸おいた。
「人間を、殺せるのか?」
静かに総士が言い放つ。鋭い視線に耐えられなくて、思わず顔を背けそうになる。
苦しい。まるで息ができないかのような感覚がする。ぎゅっと、胸のあたりを右手で押さえる。
真っ暗だ、と思う。微かに明かりの漏れる方向すら見当たらない程の真っ暗な空間。
苦しい。助けて欲しい。誰かにこの手を引っ張って無理矢理にでも歩かせて欲しい。
誰に?総士に?そんなことできるわけない。
また、総士に自分の闇を背負わせるなんて。絶対に。
「来主が見てたら、何て言うのかな?」
ぽつりと一騎が呟いた。わからなかった。また、涙が溢れた。
「あいつが帰ってくるまでこの島が平和であり続けるためには…」
総士は一騎を更に強く抱きしめる。
「人間を、殺さなきゃいけないんだ」
低い声、なんだか知らない他人のような声で総士は言った。
総士に触れている部分から直接響く「殺す」という言葉が、すっと自分の中に溶け込んでいくような気がして、
一騎は思わず身震いした。
一騎は半身を起こしたベッドの上で、整わない呼吸に激しく顔を歪ませる。
鼓動だけがやけに大きく身体中に響いて、次第に目の前の景色がぼやけていく。
つけっぱなしのモニターは、さっきまで流れていた映像の再生が終わって一面が青く変わっていた。
「ダメだ、引き込まれるな」
まるで正気を保つかのように、一騎はぎゅっとシーツを握り締める。
「俺と同じにしちゃ…ダメなんだ」
ぽつりと、一騎は呟いた。
瞬間、頬に一筋の涙が流れる。シーツ滑り落ちて一粒のシミを作る。
こんな思いを味わうのは俺だけでいいのに、俺にはその資格があるのに、あいつに罪はないのに。
「ごめんな」
歯痒かった。
戦闘に出ることができず、ただ毎日皆が島のために戦っている様子を映し出すモニターを眺めるだけ。
叫んでも声は届くはずもない、仲間の機体が危機に晒されても助けに入ることもできない。
自由になる両手は、いつでも敵の攻撃を読んで次の一手を繰り出そうとしているのに。
気がつけばただ虚しく空中を彷徨わせているだけ。
そして力なく投げ出した両手をぼんやりと見つめては、モニターの音ばかりが勝手に耳へと流れ込む。
確かカウント2秒を残して、耳を劈くような爆発音。距離はたぶん、視認できないほど遠くだ。
パラパラと微かに聞こえる音に、また命が消えた、と一騎は茫然とする。
「悪いのは、お前じゃないんだ…暉」
一騎の目から再び涙が溢れた。同時に、メディカルルームのドアが開く音がした。
「一騎、どうした?」
総士の声だった。
一騎はゆっくりと振り向く。総士はベッドサイドへ駆け寄ると、一騎の肩をそっと抱き寄せた。
「大丈夫か?気分、悪いんだろう?」
耳元で総士が尋ねた。そのまま、するりと伸びてきた右手に前髪を掻き揚げられる。
その感触が心地よすぎて思わず一騎はぼーっとしてしまう。そしてまた一筋、涙が流れる。
「みんな無事だから」
唐突に総士は言って、一騎が手にしていたリモコンを取り上げるとモニターの電源を落とした。
そしてモニターを見つめる一騎の視線を逸らせるように自分の方を向かせる。
「お前が心配するようなことは、ないから」
総士は言った。一騎の目を見つめたまま。
けれどなんだかとても頼りない、か細い声がと一騎は思う。
見つめた先の総士の目の奥が、微かに揺らめいたような気がした。
一騎は大きく息を吸って静かに吐き出すと、瞬きをひとつして総士を見上げた。
「あいつは…暉は、人間を殺すことに快感を覚えてる」
突然口を開いた一騎に驚いたのか、総士は目を見開いたまま何も言わない。
「暉が悪いんじゃない、けど…ダメだ、あいつを戦闘に出すのは、そしたらもう…」
「一騎、こんな言い方が適切じゃないことくらい解ってる。でもゼロファフナーがいなければ今の戦力では」
「ダメだ!」
「わかるだろう?一騎、今の戦力ではゼロファフナーがいなければ敵に太刀打ちできないことくらい」
「でも、このままじゃ暉が」
「じゃあ、お前が代わりに戦うとでもいうのか?」
そこまで言って、総士は一呼吸おいた。
「人間を、殺せるのか?」
静かに総士が言い放つ。鋭い視線に耐えられなくて、思わず顔を背けそうになる。
苦しい。まるで息ができないかのような感覚がする。ぎゅっと、胸のあたりを右手で押さえる。
真っ暗だ、と思う。微かに明かりの漏れる方向すら見当たらない程の真っ暗な空間。
苦しい。助けて欲しい。誰かにこの手を引っ張って無理矢理にでも歩かせて欲しい。
誰に?総士に?そんなことできるわけない。
また、総士に自分の闇を背負わせるなんて。絶対に。
「来主が見てたら、何て言うのかな?」
ぽつりと一騎が呟いた。わからなかった。また、涙が溢れた。
「あいつが帰ってくるまでこの島が平和であり続けるためには…」
総士は一騎を更に強く抱きしめる。
「人間を、殺さなきゃいけないんだ」
低い声、なんだか知らない他人のような声で総士は言った。
総士に触れている部分から直接響く「殺す」という言葉が、すっと自分の中に溶け込んでいくような気がして、
一騎は思わず身震いした。
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