蒼穹のファフナー文章(ときどき絵)サイト
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2024.11.22 Friday
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星に願いを2
2011.11.20 Sunday
それは不意に訪れる、自分でさえも気付かないほど突然で、自然に。
訳もなく涙が溢れることなんて、まさか現実に自分の身に起ころうとは思っても見なかった。
雲ひとつない青空を見上げると、乗りなれた愛機のザインを前にすると、それ以外にもあとひとつ。
理由なんてわからない。わからないのに、流れる。昨日もそうだった。
「わかんない」
一騎はぽつりと呟いた。ただ一人、アルヴィスの廊下に立ち尽くして。
大きく開いた窓のフレームに手をかける、少し手を滑らせては止めて、影の伸びる方を見つめる。
黒く長く壁に映った自分の影を見つめてふと気付く。
最近、空を見上げることが少なくなった?
それは単に、後ろめたいから?
「わかんないって」
一騎はまた誰にともなく呟いた。
右手でぎゅっと心臓のあるあたりを押さえる、そして深く息を吐く。
日に日に、自分でも理解できない感情が自分の中でゆっくりと増殖していくような。
「だから、わかんないんだ」
俯いて呟いた、消えてなくなりそうな声だと、一騎は思う。
自分のことすら自分でわからないのに、この身体の境界を越えた外の、もっと大きなことなんてわかるはずがない。
わかるはずなんてないのだから、わからなくて当然なんだ、と。
そうやってまた自分を正当化する。
一瞬で暴走してしまいそうな感情に蓋をする。
見ないフリをすることは得意だ、たった4年前までそうしてきたように。また少し、感情を鈍くすればいい。
「一騎?」
ふと総士の声がして、一騎は振り返る。すると、総士の目が見開かれる。
「どうした?」
「…?」
「何で、泣いてるんだ」
その声で、一騎は自分の頬を流れているものに気付く。
まただ、またひとつ自分の中で自分でもわからない部分が増えていく。
そっと、音も立てずに、わからないのに確実に、それの体積は大きくなっていく。
「…ない」
「え?」
「わかんないんだ」
精一杯何でもない顔をしようとして失敗して涙がもっと溢れた。
その瞬間、ふわりと総士の香りに包まれる。
抱きしめられた、とわかるより先に、総士の背中に両手をまわしてその胸に深く顔を埋めた。
そして歯車はゆっくりと狂い始める。
「あああぁぁぁぁああぁぁああああ」
「一騎っ…!!」
一騎は絶叫して、気を失った。
たった数十秒前に敵を撃破したマークザインが地面へと崩れ落ちる。
まるでスローモーションのように全てがはっきりと見えたというのに、総士は目の前の状況を理解することが
どうしてもできなかった。
光り輝きながら周囲を取り囲むパネルに、パイロットと機体の異常を知らせるものは何一つない。
あるのはただ気味悪いほどの静寂と、撃破されて粉々になった敵機の残骸と、雲ひとつなく広がる青空。
ぷつりと途絶えたまま再び繋がることのないクロッシングだけが、一騎の身体に異常が起きたことを
唯一知らせるものだった。
「総士、聞こえるか?ザインは俺が格納庫まで運ぶ。救護体制は整ってるか?」
突然、マークアハトに乗った剣司から通信が入る。
呆然としていた総士は「ああ、大丈夫だ、頼む」と短く言うと通信を切った。
地面に伏したままのザインがアハトによって抱き起こされる。
未だ一騎の意識は戻る気配を見せない。一体あの時何が一騎に起きたのか。
考えても答えの出ない疑問ばかりが次々と浮かび、その度にそれを振り切るかのように総士は頭を振った。
そして目の前をおそるおそる見つめる。
データは相変わらず何の異常も知らせない。
ザインは自力で動くことができず、パイロットは気絶しクロッシングも絶たれたままだというのに。
それでも、目の前を埋め尽くすのは「正常」なデータの表示ばかり。
それがとても恐ろしいことのように思えて、小刻みに震える身体を総士は止めることができなかった。
訳もなく涙が溢れることなんて、まさか現実に自分の身に起ころうとは思っても見なかった。
雲ひとつない青空を見上げると、乗りなれた愛機のザインを前にすると、それ以外にもあとひとつ。
理由なんてわからない。わからないのに、流れる。昨日もそうだった。
「わかんない」
一騎はぽつりと呟いた。ただ一人、アルヴィスの廊下に立ち尽くして。
大きく開いた窓のフレームに手をかける、少し手を滑らせては止めて、影の伸びる方を見つめる。
黒く長く壁に映った自分の影を見つめてふと気付く。
最近、空を見上げることが少なくなった?
それは単に、後ろめたいから?
「わかんないって」
一騎はまた誰にともなく呟いた。
右手でぎゅっと心臓のあるあたりを押さえる、そして深く息を吐く。
日に日に、自分でも理解できない感情が自分の中でゆっくりと増殖していくような。
「だから、わかんないんだ」
俯いて呟いた、消えてなくなりそうな声だと、一騎は思う。
自分のことすら自分でわからないのに、この身体の境界を越えた外の、もっと大きなことなんてわかるはずがない。
わかるはずなんてないのだから、わからなくて当然なんだ、と。
そうやってまた自分を正当化する。
一瞬で暴走してしまいそうな感情に蓋をする。
見ないフリをすることは得意だ、たった4年前までそうしてきたように。また少し、感情を鈍くすればいい。
「一騎?」
ふと総士の声がして、一騎は振り返る。すると、総士の目が見開かれる。
「どうした?」
「…?」
「何で、泣いてるんだ」
その声で、一騎は自分の頬を流れているものに気付く。
まただ、またひとつ自分の中で自分でもわからない部分が増えていく。
そっと、音も立てずに、わからないのに確実に、それの体積は大きくなっていく。
「…ない」
「え?」
「わかんないんだ」
精一杯何でもない顔をしようとして失敗して涙がもっと溢れた。
その瞬間、ふわりと総士の香りに包まれる。
抱きしめられた、とわかるより先に、総士の背中に両手をまわしてその胸に深く顔を埋めた。
そして歯車はゆっくりと狂い始める。
「あああぁぁぁぁああぁぁああああ」
「一騎っ…!!」
一騎は絶叫して、気を失った。
たった数十秒前に敵を撃破したマークザインが地面へと崩れ落ちる。
まるでスローモーションのように全てがはっきりと見えたというのに、総士は目の前の状況を理解することが
どうしてもできなかった。
光り輝きながら周囲を取り囲むパネルに、パイロットと機体の異常を知らせるものは何一つない。
あるのはただ気味悪いほどの静寂と、撃破されて粉々になった敵機の残骸と、雲ひとつなく広がる青空。
ぷつりと途絶えたまま再び繋がることのないクロッシングだけが、一騎の身体に異常が起きたことを
唯一知らせるものだった。
「総士、聞こえるか?ザインは俺が格納庫まで運ぶ。救護体制は整ってるか?」
突然、マークアハトに乗った剣司から通信が入る。
呆然としていた総士は「ああ、大丈夫だ、頼む」と短く言うと通信を切った。
地面に伏したままのザインがアハトによって抱き起こされる。
未だ一騎の意識は戻る気配を見せない。一体あの時何が一騎に起きたのか。
考えても答えの出ない疑問ばかりが次々と浮かび、その度にそれを振り切るかのように総士は頭を振った。
そして目の前をおそるおそる見つめる。
データは相変わらず何の異常も知らせない。
ザインは自力で動くことができず、パイロットは気絶しクロッシングも絶たれたままだというのに。
それでも、目の前を埋め尽くすのは「正常」なデータの表示ばかり。
それがとても恐ろしいことのように思えて、小刻みに震える身体を総士は止めることができなかった。
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