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蒼穹のファフナー文章(ときどき絵)サイト
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Dear,my friend1
「お前、全然見ないで調味料取るんだな」

ぽつりと総士がつぶやいた。
あ、と一騎は心の中で思う。
ずっとこうしていて、別にそれをみんなも普通だと思っていたから気がつかなかった。
ちゃんと目は見えるのに、見ることをしないというのがいつのまにか癖になってしまったようだ。

「見ても、いいんだけどさ」

一騎もぽつりとつぶやく。
思い出したくないわけではないけれど、目が見えなかった時のことをうまく言葉に出来ない自分がいる。
もしかしたら、総士はこのことについて負い目を感じたりしないだろうか。
なんてことを考えるくらいには、まだぎこちなさが残る時間しか過ぎていなかったのは事実で。
いつも戸惑って言葉に詰まってしまうことに、一騎はほんの少しだけ罪悪感めいたものを感じていた。

「でも、そのほうが料理上手そうに見えるよな」

「上手そう、じゃなくてほんとに美味しいんだってば」

それまで黙々とテーブルを拭いていた真矢がひょっこり顔を上げて、笑った。









「あれ、一騎カレー食べるの初めてだったの?皆城くん」

向かいのテーブルに座った真矢は心底びっくりした様子で頬杖をついた。
まぁ、それもそのはずというか、総士が帰ってきてからもう2ヶ月以上は経つのだから、
真矢がびっくりするのも仕方のないことだった。

「最初に来た時は何も頼まなかったし、ああ、でもこの前はコーヒーを頼んだ」

「はぁ、なんていうか、ブラック好きなのは変わんないんだね、それだけじゃないけど」

と、なんだか含みを持たせた表現で真矢がため息交じりに言う。
それとは反対に、一騎は顔を真っ赤にして俯いた。
急に思い出したからだ。総士がついさっき言った、「最初の時」を。

あれは、総士がこの島に帰ってきてまだ一週間も経たないうちだった。
どうやって二年もの間の空白を埋めようかと、ともすればお互い派手に空回りしそうな程ぎくしゃくしていて。
ちゃんと話そうと思っても、頭の中をぐるぐると映像ばかりが流れるだけでそれがうまく言葉にならない。
淡々と事実を話すには、余りにも乱高下した感情が今でも邪魔をするし、
もとより、そんな風に話せるような器用さを、一騎は持ち合わせていなかった。

そんな時にふと思いついたのが「楽園」だった。
この二年間、ずっと毎日のように通いつめては料理をしていた場所。
あそこに行けば、何か話すきっかけが見つかるかもしれないと。だから、総士を誘って二人で行った。
そして、ドアを閉めた瞬間だった。
一騎は総士に抱きしめられていた。
肩口に総士の長い髪が触れるのがわかる。耳に、総士の頬が触れる。
ほんの少しだけ、呼吸するのを忘れそうになる。
まるで羽交い絞めにされるかのように後ろから抱きしめられたまま、しばらく一騎は動くことが出来なかった。
静かに、総士が囁く。

「ここに来たかったんだ、お前と」

泣きそうな声だった。


「ちょっと一騎くん!湯気ものすごい出てるけど熱くない?大丈夫?」

真矢の声ではっと一騎は我に返る。目の前の鍋からは沸騰した湯気がもうもうと天井へと巻き上がっている。

「ねぇ、一騎くん無理してない?具合悪かったらいつでも言っていいんだから、ね?」

咄嗟に「違う」と言おうとしたのだけど、振り向いた真矢と目が合ったらなぜか言葉が出てこなくなって、
ただぶんぶんと大きく首を振った。
目が見えなかった頃からずっと、真矢はいつもこうして一騎のことを気にかける。
あの頃から比べればずっと減ったけれど、今でもたまに体調が悪くなるから真矢は心配なのだろう。

「皆城くんの前だからって、強がっちゃダメだよ!」

「大丈夫、僕がついてるから」

念を押すように言う真矢の向かいで、総士はふんわり笑った。
それは「僕がついてるから」具合なんて悪くならない、のか、それとも倒れても大丈夫、なのか。
一騎の頭の中で総士の言葉がぐるぐるとまわっては、なんだか恥ずかしくなってまた俯いてしまった。
「僕がついてるから」って、なんか、それは。
なんだかとっても、お互い繋がってます!って他人に見せびらかしてるようで。
無意識下で総士と二年間繋がり続けていたのは、今となっては周知の事実だけど。
本人からそれっぽい言葉にされるのは、やっぱりとっても恥ずかしいと、一騎は耳まで真っ赤になりながら思った。

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