蒼穹のファフナー文章(ときどき絵)サイト
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2024.11.22 Friday
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Dear,my friend3
2011.11.20 Sunday
桜の花びらがどこからかひらひらと舞って、春風がふわりと目の前をすり抜ける。
見渡す限りの青い空と相変わらずそれに曖昧に境界線を引く海がキラキラと光って総士は思わず目を細めた。
この海辺の道にさしかかるといつも、総士は目に映る全ての景色に「帰ってきたんだ」と実感させられる。
そして隣を歩く一騎の手を握る、それがここ最近の総士の癖だった。
「一騎?」
いつものように手をそっと絡めようとして、そこにあるはずの一騎の手がないことに総士は驚いて名前を呼んだ。
でもいつまで経っても返ってくる声はない。
不思議に思って振り返ると、そこには海の向こうを見つめたまま立ち尽くす一騎の姿があった。
ぽろり、と一騎の頬を一筋の涙がつたう。
一瞬、声をかけてはいけないかのような錯覚に陥る。
その涙はあまりにも自然すぎて、おかしいけれど見とれてしまうくらいに普通に。
そしてそのまま止まることなく流れ続ける。
「一騎…?」
慌てて駆け寄った総士は一騎の肩に手を置くとその顔を覗き込む。
でも、その目に総士の姿が映ったような気配はない。
まるで、彼のその目がまだ赤かった頃のような、懐かしいけれど思い出したくはない記憶が蘇る。
見えていないはずの目に、青い空だけがただ映っていた。
その色もそれが空であることもわからなかったかもしれないのに。
はっ、と総士は我に返る。
そしてそのままぎゅっと一騎を抱き寄せた。
そっと耳元で囁きかける。
「僕がわかるか?…一騎」
言いながら一騎の髪をそっと撫でる。また、春風が吹く。まるでここだけ避けるみたいに。
総士はそっと辺りを見渡した、当たり前のように誰もいなくて少しだけほっとする。
今はこんなことを心配する時じゃないはずなのにと、湧き出た安堵の感情に心の中で苦笑する。
びく、と腕の中で一騎が動いた。
「一騎?」
そっとうつむいたままの一騎の顔を上げさせると、総士はその目を覗き込んだ。
「そー…し」
今度はその目に自分の姿がちゃんと映る。
それを確認して総士は一騎にふわりと微笑みかけた。
「大丈夫か?」
「だい…じょうぶ、だって」
口ごもった一騎の目がゆらゆらと揺れる。それは、今の状況が飲み込めていない証拠で。
もう少ししたらたぶん、突き飛ばすように腕の中から逃げてしまうんだろうな、なんて思うとちょっと悲しい気もする。
「僕と手を繋ぐのよりもドキドキするようなこと、あった?」
なんて気の利いたことはまだ言えない。
二年経っても不器用なのは変わらない、と皆にまで言われる意味がなんとなくわかったような気がする、少しだけ。
「なんでもない、から」
そんなことをぐるぐると考えているうちに一騎が口を開いた。
総士を見上げると、なんだかとてもぎこちなく笑う。
「そっか」
総士は言って、ぽん、と引き寄せた一騎の頭に頬を寄せた。
精一杯の考えた結果の答えがこの一言だけなんてのも恥ずかしかったけれど、
それよりもなんだか、ものすごく柄ではないけれど抱きしめたいなんて気分になってしまったから。
そしてなにより、いつのまにか一騎の手が総士のシャツを掴んでいたのを見てしまって、
「こんなとこで何するんだよ」と突き飛ばされなかったことがちょっと、いやかなり嬉しかったからだったのかもしれない。
見渡す限りの青い空と相変わらずそれに曖昧に境界線を引く海がキラキラと光って総士は思わず目を細めた。
この海辺の道にさしかかるといつも、総士は目に映る全ての景色に「帰ってきたんだ」と実感させられる。
そして隣を歩く一騎の手を握る、それがここ最近の総士の癖だった。
「一騎?」
いつものように手をそっと絡めようとして、そこにあるはずの一騎の手がないことに総士は驚いて名前を呼んだ。
でもいつまで経っても返ってくる声はない。
不思議に思って振り返ると、そこには海の向こうを見つめたまま立ち尽くす一騎の姿があった。
ぽろり、と一騎の頬を一筋の涙がつたう。
一瞬、声をかけてはいけないかのような錯覚に陥る。
その涙はあまりにも自然すぎて、おかしいけれど見とれてしまうくらいに普通に。
そしてそのまま止まることなく流れ続ける。
「一騎…?」
慌てて駆け寄った総士は一騎の肩に手を置くとその顔を覗き込む。
でも、その目に総士の姿が映ったような気配はない。
まるで、彼のその目がまだ赤かった頃のような、懐かしいけれど思い出したくはない記憶が蘇る。
見えていないはずの目に、青い空だけがただ映っていた。
その色もそれが空であることもわからなかったかもしれないのに。
はっ、と総士は我に返る。
そしてそのままぎゅっと一騎を抱き寄せた。
そっと耳元で囁きかける。
「僕がわかるか?…一騎」
言いながら一騎の髪をそっと撫でる。また、春風が吹く。まるでここだけ避けるみたいに。
総士はそっと辺りを見渡した、当たり前のように誰もいなくて少しだけほっとする。
今はこんなことを心配する時じゃないはずなのにと、湧き出た安堵の感情に心の中で苦笑する。
びく、と腕の中で一騎が動いた。
「一騎?」
そっとうつむいたままの一騎の顔を上げさせると、総士はその目を覗き込んだ。
「そー…し」
今度はその目に自分の姿がちゃんと映る。
それを確認して総士は一騎にふわりと微笑みかけた。
「大丈夫か?」
「だい…じょうぶ、だって」
口ごもった一騎の目がゆらゆらと揺れる。それは、今の状況が飲み込めていない証拠で。
もう少ししたらたぶん、突き飛ばすように腕の中から逃げてしまうんだろうな、なんて思うとちょっと悲しい気もする。
「僕と手を繋ぐのよりもドキドキするようなこと、あった?」
なんて気の利いたことはまだ言えない。
二年経っても不器用なのは変わらない、と皆にまで言われる意味がなんとなくわかったような気がする、少しだけ。
「なんでもない、から」
そんなことをぐるぐると考えているうちに一騎が口を開いた。
総士を見上げると、なんだかとてもぎこちなく笑う。
「そっか」
総士は言って、ぽん、と引き寄せた一騎の頭に頬を寄せた。
精一杯の考えた結果の答えがこの一言だけなんてのも恥ずかしかったけれど、
それよりもなんだか、ものすごく柄ではないけれど抱きしめたいなんて気分になってしまったから。
そしてなにより、いつのまにか一騎の手が総士のシャツを掴んでいたのを見てしまって、
「こんなとこで何するんだよ」と突き飛ばされなかったことがちょっと、いやかなり嬉しかったからだったのかもしれない。
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