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蒼穹のファフナー文章(ときどき絵)サイト
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星に願いを最終話(前編)
季節外れの灯籠が静かに水面を流れていく。
名前が刻まれているのは2つだけ、その先には何も書かれていない多くの灯籠が風に流されて沖へと向かっている。

「元気に、してるのかな…どこかで」

そっと呟いた。
もうここにはいない2人のことを思いながら。


この季節外れの灯籠流しは、ほんの数日前に決まった。
2人をちゃんと送り出してあげようと、そう言ったのは剣司だった。
去年の残りがあるからと、2つだけ灯籠を持ってきた剣司に真矢は首を横に振った。

「もっとたくさん…必要だから」

続きは、心の中だけに留めておいた。
何も言わず倉庫に戻っていった剣司には、たぶんその意味がわかったはずだ。

自分達が殺した人間の数が、いつからかもうわからなくなっていた。
それが良くない事なのだけは、かろうじてまだ認識できる。
けれどいつも心の半分以上が鉛のように重く沈んで、何もかもが上手く感じ取れないような気がする。
息苦しいような悲しいような、よくわからないけれど不快な気持ちだった。

「一騎…くん?」

通路を横切る一騎が見えて、思わず真矢は呼び止める。
その声に気付いた一騎は足を留めると真矢の方を振り向く。

「急いでる?」

「いや、そんなことない…けど」

一騎を見るのはなんだか久しぶりだった。
あの日、ゼロファフナーがフェンリルを作動させて大爆発を起こした日から今まで、考えてみれば一度もその姿を見ていない。
それもそのはずで、あの跡、ザインの中で意識を失った一期はすぐにメディカルルームへと運ばれ、目を覚ましたのはつい昨日のことだった。

「3日後に、灯籠流しすることになったの、知ってる?」

一騎と一緒にベンチに腰を下ろした真矢は聞いた。

「そっか…2人の」

それだけ言って一騎は俯く。

「2人だけじゃなくて、もっと…たくさん。こんな事したって消えるわけじゃないことはわかってるよ」

「うn」

「でも、忘れたり…何も感じなくなったり…そんな事だけは絶対にしたくないから」

「うん」

「一騎くんも…」

「やっぱり遠見は、すごいよ」

「え?」

一騎は俯いていた顔を上げると、少しだけ笑った。

「遠見はここに、いるべきだと思うんだ」

「何…言ってるの?一騎くん」

一騎はゆっくりと立ち上がる。真矢は思わず制服の袖を掴んだ。

「一騎くんだってここにいるじゃない、今だって」

真矢の方を一騎は見ない。かわりに静かに口を開いた。

「確かに…俺は、いたよ。ここに」

そう言って掴んだままだった真矢の手を優しく外すと、一騎は歩き出す。
かける言葉が見つからないまま、ゆっくりと遠くなる後ろ姿を真矢は見つめることしかできなかった。

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