蒼穹のファフナー文章(ときどき絵)サイト
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END OF THE WORLD6
2011.11.20 Sunday
お互い無言のままもう何分、もしかすると一時間くらい経ったのかもしれない。
一騎は座ったまま、総士は窓辺に立ったまま、それは前に二人が会った時のようだったけれど、
その時とはまた違った重苦しい雰囲気が部屋中に立ち込めて息苦しい気さえする程だった。
一騎はシーツを握りしめた手を見つめてばかりいたが、不意に顔を上げると窓辺に立つ総士の
後ろ姿に向けて口を開こうとした。
「ごめん」
しかしそれは少し先に発された総士の言葉によって遮られた。
「何が」と小さく、なるべく素っ気ないように聞こえるように一騎は答えると総士を見上げる。
すると総士はやっと一騎の方を振り返っては少しだけ困ったように微笑んだ。
「仕事じゃ…ないんだ」
「別にどっちでもいいけど」
「一騎」
「安心…したいだけなんだろ?」
一騎は思い切ってその言葉を口にする。
曖昧すぎる言葉で表面だけ取り繕うような態度を取る総士に言い様のない苛立ちを覚えたからだ。
総士が自分に聞きたいことなどたぶんもう一騎は解っているつもりだった。
不意に、ここに来る前に取った操の行動が頭の中をよぎる。
総士が仕事ではなく非公式に、そう、例えば友達として自分にそれを聞きたかったとしても、
前提なんてどうでもよかった。
どうしてこうも辻褄が合ってしまうことばかり起こって、それをどうして自分が、どうして友達の
前でまるで何かを確認でもされるように答えなければならないのだろうと、半ば逃げ出したいよう
な気持ちさえ一騎は抱いていた。
「でも、それは俺には無理だから」
しばらく間をおいてそれだけ口にする。
案の定、総士は少しだけ、でも驚いた声を出した。
「総士の思ってる通りだから」
「一騎、それは」
「俺には、それしか言えない」
一騎は総士の目を見つめて言った。
事実だけを言えば、総士が知りたいのはそれだから、そしてなんとなく嘘は吐きたくなかった気が
したからだった。
「そうか…わかった」
総士が小さく呟いて目を細める。
逸らされることのない目線に頭の中が混乱しそうになって一騎は思わず下を向いた。
何も話したくないのに、何か声を掛けて欲しいなんて矛盾した気持ちがぐるぐると身体中を渦巻く。
本当にどうしたらいいのかわからないと思った。
「馬鹿みたい」
「え?」
「俺、すっごい久しぶりだったけど、だから、総士に会えたのうれしくて、昔のこととか思い出し
たりしてさ、うれしかったのに」
一騎は総士をまた見上げた、総士は相変わらず一騎の方を見つめたままだった。
「何で今は、こんな話しか出来なくなっちゃったんだろうね」
「そう…だね」
「否定しないんだ」
「ごめん」
そう言って総士は初めて目を伏せた。
たったそれだけの仕草だったのに、なぜか一騎はそれ以上に物語る何かを感じられた気がしてし
まって、これ以上ないくらいに唇を噛み締める。
「じゃあさ」
一騎が口を開くと総士はこちらをまた見つめたので、一騎は口元を釣り上げて笑う。
「今すぐ俺を抱いてよ、総士」
「かず…き?」
一騎はベッドサイドに置いてあった封筒をこれ見よがしに取り上げると目の前でひらひらと振って
みる。
「この金額分、俺に仕事させてよ」
「僕は、そんなつもりはない」
「そうやって、友達面するの、もうやめよう?」
そう言って一騎は総士をまっすぐ見つめる。
「どうして、そんな」と声に出さずに総士の口が動いたのが見えて、一騎は少し表情を歪めた。
「昔みたいに総士に期待しちゃう俺を、めちゃくちゃにしてよ」
一騎は総士に向かって右手を差し出した。
それはいつも客を取る時に一騎がしているポーズであり、その手を取られれば合意の下に行為が
行われることを意味するものだ。
案の定、差し出された手を見た総士は驚いた表情で一騎を見つめ返す。
でもその気持ちを汲んでやるつもりなど、一騎にはなかった。
「もう、顔も見たくなくなるくらいにさ」
そう言ってまた笑った、たぶん、総士が嫌いな方の笑顔で。
「…それも、お前の仕事なのか?」
「そう思う?」
「いや」
「じゃあ、それでいいよ」
それだけ言って一騎は差し出した手を早く取れとでも言いたげに上下に動かす。
総士はしばらくそれを黙って見つめていたが、突然、諦めたようにひとつ息を大きく吐くと、
「わかった」と小さく呟いてその手を取った。
「遠慮なんて、しなくていいから」
わざと無愛想に一騎は言い放った。
自分に触れる総士の手がもしもまだ優しさなんてものを残していたら、とてもこの時間を耐え
きることなんて出来ないと思ったからだ。
一騎は座ったまま、総士は窓辺に立ったまま、それは前に二人が会った時のようだったけれど、
その時とはまた違った重苦しい雰囲気が部屋中に立ち込めて息苦しい気さえする程だった。
一騎はシーツを握りしめた手を見つめてばかりいたが、不意に顔を上げると窓辺に立つ総士の
後ろ姿に向けて口を開こうとした。
「ごめん」
しかしそれは少し先に発された総士の言葉によって遮られた。
「何が」と小さく、なるべく素っ気ないように聞こえるように一騎は答えると総士を見上げる。
すると総士はやっと一騎の方を振り返っては少しだけ困ったように微笑んだ。
「仕事じゃ…ないんだ」
「別にどっちでもいいけど」
「一騎」
「安心…したいだけなんだろ?」
一騎は思い切ってその言葉を口にする。
曖昧すぎる言葉で表面だけ取り繕うような態度を取る総士に言い様のない苛立ちを覚えたからだ。
総士が自分に聞きたいことなどたぶんもう一騎は解っているつもりだった。
不意に、ここに来る前に取った操の行動が頭の中をよぎる。
総士が仕事ではなく非公式に、そう、例えば友達として自分にそれを聞きたかったとしても、
前提なんてどうでもよかった。
どうしてこうも辻褄が合ってしまうことばかり起こって、それをどうして自分が、どうして友達の
前でまるで何かを確認でもされるように答えなければならないのだろうと、半ば逃げ出したいよう
な気持ちさえ一騎は抱いていた。
「でも、それは俺には無理だから」
しばらく間をおいてそれだけ口にする。
案の定、総士は少しだけ、でも驚いた声を出した。
「総士の思ってる通りだから」
「一騎、それは」
「俺には、それしか言えない」
一騎は総士の目を見つめて言った。
事実だけを言えば、総士が知りたいのはそれだから、そしてなんとなく嘘は吐きたくなかった気が
したからだった。
「そうか…わかった」
総士が小さく呟いて目を細める。
逸らされることのない目線に頭の中が混乱しそうになって一騎は思わず下を向いた。
何も話したくないのに、何か声を掛けて欲しいなんて矛盾した気持ちがぐるぐると身体中を渦巻く。
本当にどうしたらいいのかわからないと思った。
「馬鹿みたい」
「え?」
「俺、すっごい久しぶりだったけど、だから、総士に会えたのうれしくて、昔のこととか思い出し
たりしてさ、うれしかったのに」
一騎は総士をまた見上げた、総士は相変わらず一騎の方を見つめたままだった。
「何で今は、こんな話しか出来なくなっちゃったんだろうね」
「そう…だね」
「否定しないんだ」
「ごめん」
そう言って総士は初めて目を伏せた。
たったそれだけの仕草だったのに、なぜか一騎はそれ以上に物語る何かを感じられた気がしてし
まって、これ以上ないくらいに唇を噛み締める。
「じゃあさ」
一騎が口を開くと総士はこちらをまた見つめたので、一騎は口元を釣り上げて笑う。
「今すぐ俺を抱いてよ、総士」
「かず…き?」
一騎はベッドサイドに置いてあった封筒をこれ見よがしに取り上げると目の前でひらひらと振って
みる。
「この金額分、俺に仕事させてよ」
「僕は、そんなつもりはない」
「そうやって、友達面するの、もうやめよう?」
そう言って一騎は総士をまっすぐ見つめる。
「どうして、そんな」と声に出さずに総士の口が動いたのが見えて、一騎は少し表情を歪めた。
「昔みたいに総士に期待しちゃう俺を、めちゃくちゃにしてよ」
一騎は総士に向かって右手を差し出した。
それはいつも客を取る時に一騎がしているポーズであり、その手を取られれば合意の下に行為が
行われることを意味するものだ。
案の定、差し出された手を見た総士は驚いた表情で一騎を見つめ返す。
でもその気持ちを汲んでやるつもりなど、一騎にはなかった。
「もう、顔も見たくなくなるくらいにさ」
そう言ってまた笑った、たぶん、総士が嫌いな方の笑顔で。
「…それも、お前の仕事なのか?」
「そう思う?」
「いや」
「じゃあ、それでいいよ」
それだけ言って一騎は差し出した手を早く取れとでも言いたげに上下に動かす。
総士はしばらくそれを黙って見つめていたが、突然、諦めたようにひとつ息を大きく吐くと、
「わかった」と小さく呟いてその手を取った。
「遠慮なんて、しなくていいから」
わざと無愛想に一騎は言い放った。
自分に触れる総士の手がもしもまだ優しさなんてものを残していたら、とてもこの時間を耐え
きることなんて出来ないと思ったからだ。
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