蒼穹のファフナー文章(ときどき絵)サイト
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2024.11.22 Friday
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遠く夢を見る
2011.11.20 Sunday
「苦しいんだ、泣かせてよ、でもお前には関係ない、なんでだろう、少しだけ似てるからかな」
薄暗い部屋の中で一騎は溢れる涙を気にも留めず、でも未だ俯いたまま呟いた。
少しだけ総士に似ている気がするのは、目の前の彼もまたフェストゥム側に親和性のある存在だからなのか。
あれから二年間、誰かに縋りつきそうになる自分を必死に押し殺してきたつもりだった一騎は少しだけ変わった。
決して耐えられなくなった訳では無いと自覚しているのに、なぜ目の前の人物に弱みを握らせるようなことを
したのか、苦しさでも寂しさでもないもっと深くのどろどろとした感情の吐露を、ただ聞き流してくれるような
そんな小さな望みを託したことだけは事実だった。
彼が自分の本当の気持ちを汲むことなんて有り得ないと解りつつも、この時間の共有が持つ意味が徐々に大きく
なり始めていることに嫌でも気付かされるような気がしてくる、と一騎はぼんやり思う。
「僕の前でだけ泣いてくれる一騎ってのはすごく嬉しいんだけど、最近じゃ引き寄せられてるのか、寧ろ突き
放されてるようで、君って意外と残酷だよね」
「操よりはマシだって」
「何その罪のなすりつけ合いみたいな、まぁ別にいいけど、一騎の泣き顔が好きとかいう僕も相当だしね」
そう言って操は一騎の前にしゃがみ込むと、両手で顔をはさみ無理矢理自分と目が合うように上げさせると、
にこりと微笑んだ。
相変わらず何を考えているのか解らないな、と一騎はそれをまじまじと見ながら思う、けれど口には出さない。
やがていつものように操の手は一騎の髪をくしゃりと撫でては、ゆるりと輪郭をなぞるように動かされる。
そのくすぐったいような体温に包まれる感覚が、いつしか記憶の中の大切なものと重なってしまうような気が
して一騎は少しだけ顔を顰めた。
「何でいつも、こんな時に限って側にいるの?」
自分でも驚くほど平坦な声で一騎は操に尋ねる。
操はまた、今度は声を上げて笑った。
「一人よりはマシでしょ?他のみんなには見せちゃいけないって頑なに我慢するからさ、一騎って」
「解った風に言うなよ」
「酷いな、少しくらい解らせてよ」
操は親指の腹で一騎の涙を拭うとそのまま自分の口元に運んでぺろりと舐め上げる。
いつもそうだ、けれどそんな事をしたって言葉以上のコミュニケーションなんか図れる訳無いのに、と一騎は
無表情のまま操の行動を見つめる。
そんなことで何か動かされるような感情など、もう自分には残っていないのだ。
「勝手にすれば」
呟いて一騎は、なんだか自分が酷く空っぽになってしまったかのような感覚に襲われる。
もともと否定しか選択してこなかった自分に何か残っているものなんてあると思う方が傲慢なのかもしれない。
思わず目頭が熱くなりかけたところで、操が口を開いた。
「じゃあさ、好きだって言ったら受け止めてくれたりするの?」
「何で受け止めなきゃいけないんだよ」
「これでも結構距離は縮まったと思ってるんだって、一騎だってそう思うでしょう?」
「勝手だよな、お前」
「一騎がそれを許してくれるからね」
そう言った操の言葉に、一騎は自分の中で叫び出しそうな程激しく渦巻く感情を再度見せつけられたような
気分になる。
いつだって救われたいんだと、確か自分はずっとそう思っては押し殺して、でも見つけてほしくて態と隙間を
開くようにしたのは紛れもなく自分。
「俺の所為かよ」と一騎は自嘲気味に呟いた。
「一騎は、強くて優しくてでもそれ以上に弱くて、ずっと一騎を見守ってた彼の気持ちがどんどん解ってき
ちゃうんだ」
「何が言いたいわけ?」
「僕、負けず嫌いなんだよね」
操はそろりと指を一騎の閉じたままの唇に沿わせてはゆっくりとなぞる。
一騎は気だるげに目を閉じると、操の指が止まるまでそのままでいた。
「お前が総士に適うはずがないから」
「当たって砕けるかなんて、当たってみなきゃ解んないでしょ?」
「そう思うならやってみれば?」
「随分、自信あるんだね」
操は笑ってその指を閉じたままの一騎の瞼に合わせる。
そのまま目を開かせるのかと思ったが、どうやらそんな気配は感じられない。
でもやっぱりこの温もりは錯覚に陥りそうになるから苦手だ、と一騎は思う。
でも振り払うようなことをしなくなったのはいつからだったかもう解らない。
その理由が、心のどこかでは求めてやまないものだということは、痛いくらいに知っているからだ。
「操ほどじゃないよ」
「褒め言葉として受け取ってもいい?」
「否定されても気にしないくせに」
そう言って一騎は口元を少しだけ綻ばせた。
薄暗い部屋の中で一騎は溢れる涙を気にも留めず、でも未だ俯いたまま呟いた。
少しだけ総士に似ている気がするのは、目の前の彼もまたフェストゥム側に親和性のある存在だからなのか。
あれから二年間、誰かに縋りつきそうになる自分を必死に押し殺してきたつもりだった一騎は少しだけ変わった。
決して耐えられなくなった訳では無いと自覚しているのに、なぜ目の前の人物に弱みを握らせるようなことを
したのか、苦しさでも寂しさでもないもっと深くのどろどろとした感情の吐露を、ただ聞き流してくれるような
そんな小さな望みを託したことだけは事実だった。
彼が自分の本当の気持ちを汲むことなんて有り得ないと解りつつも、この時間の共有が持つ意味が徐々に大きく
なり始めていることに嫌でも気付かされるような気がしてくる、と一騎はぼんやり思う。
「僕の前でだけ泣いてくれる一騎ってのはすごく嬉しいんだけど、最近じゃ引き寄せられてるのか、寧ろ突き
放されてるようで、君って意外と残酷だよね」
「操よりはマシだって」
「何その罪のなすりつけ合いみたいな、まぁ別にいいけど、一騎の泣き顔が好きとかいう僕も相当だしね」
そう言って操は一騎の前にしゃがみ込むと、両手で顔をはさみ無理矢理自分と目が合うように上げさせると、
にこりと微笑んだ。
相変わらず何を考えているのか解らないな、と一騎はそれをまじまじと見ながら思う、けれど口には出さない。
やがていつものように操の手は一騎の髪をくしゃりと撫でては、ゆるりと輪郭をなぞるように動かされる。
そのくすぐったいような体温に包まれる感覚が、いつしか記憶の中の大切なものと重なってしまうような気が
して一騎は少しだけ顔を顰めた。
「何でいつも、こんな時に限って側にいるの?」
自分でも驚くほど平坦な声で一騎は操に尋ねる。
操はまた、今度は声を上げて笑った。
「一人よりはマシでしょ?他のみんなには見せちゃいけないって頑なに我慢するからさ、一騎って」
「解った風に言うなよ」
「酷いな、少しくらい解らせてよ」
操は親指の腹で一騎の涙を拭うとそのまま自分の口元に運んでぺろりと舐め上げる。
いつもそうだ、けれどそんな事をしたって言葉以上のコミュニケーションなんか図れる訳無いのに、と一騎は
無表情のまま操の行動を見つめる。
そんなことで何か動かされるような感情など、もう自分には残っていないのだ。
「勝手にすれば」
呟いて一騎は、なんだか自分が酷く空っぽになってしまったかのような感覚に襲われる。
もともと否定しか選択してこなかった自分に何か残っているものなんてあると思う方が傲慢なのかもしれない。
思わず目頭が熱くなりかけたところで、操が口を開いた。
「じゃあさ、好きだって言ったら受け止めてくれたりするの?」
「何で受け止めなきゃいけないんだよ」
「これでも結構距離は縮まったと思ってるんだって、一騎だってそう思うでしょう?」
「勝手だよな、お前」
「一騎がそれを許してくれるからね」
そう言った操の言葉に、一騎は自分の中で叫び出しそうな程激しく渦巻く感情を再度見せつけられたような
気分になる。
いつだって救われたいんだと、確か自分はずっとそう思っては押し殺して、でも見つけてほしくて態と隙間を
開くようにしたのは紛れもなく自分。
「俺の所為かよ」と一騎は自嘲気味に呟いた。
「一騎は、強くて優しくてでもそれ以上に弱くて、ずっと一騎を見守ってた彼の気持ちがどんどん解ってき
ちゃうんだ」
「何が言いたいわけ?」
「僕、負けず嫌いなんだよね」
操はそろりと指を一騎の閉じたままの唇に沿わせてはゆっくりとなぞる。
一騎は気だるげに目を閉じると、操の指が止まるまでそのままでいた。
「お前が総士に適うはずがないから」
「当たって砕けるかなんて、当たってみなきゃ解んないでしょ?」
「そう思うならやってみれば?」
「随分、自信あるんだね」
操は笑ってその指を閉じたままの一騎の瞼に合わせる。
そのまま目を開かせるのかと思ったが、どうやらそんな気配は感じられない。
でもやっぱりこの温もりは錯覚に陥りそうになるから苦手だ、と一騎は思う。
でも振り払うようなことをしなくなったのはいつからだったかもう解らない。
その理由が、心のどこかでは求めてやまないものだということは、痛いくらいに知っているからだ。
「操ほどじゃないよ」
「褒め言葉として受け取ってもいい?」
「否定されても気にしないくせに」
そう言って一騎は口元を少しだけ綻ばせた。
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