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蒼穹のファフナー文章(ときどき絵)サイト
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おかえり
「今何考えてたかあててやろうか?」

総士は一騎を後ろから抱きしめながら言った。

「どうせわかってんだろ」

そう言って一騎は目を開けた。
ぼんやりとした視界の中に当然、総士などいるはずもなかった。
でも、髪にかかった息や声や抱きしめられた感触はまだしっかりと残っていて、
一騎はそっと唇を噛みしめた。



別に幻想だったのではない。
総士はちゃんと帰ってきたのだ。
二年の月日を経て、一騎はやっと総士に会うことができた。
長かったのか短かったのか、なんだかもうそんな時間の感覚を忘れてしまうほどだった。
思わずゆるんだ涙腺の所為で滲んだ視界の中で、総士は「ただいま」と言った、
二年前と変わらぬ笑みを浮かべて。
「おかえり」を言わなくちゃ、と口を開いた瞬間、総士の顔つきが変わる。
それすらも懐かしいと感じてしまう、二年前に見た顔。

司令官としての総士だった。



「一騎、確認出来る敵は一体、島の上空から一気に降下してくる、18秒後に接触する」

直接、脳の中に響く声。
これも二年ぶりだなんて懐かしむ気持ちを必死に拭い去って、
一騎は上空を見つめると一気に飛び上がる。

そう、今この瞬間だけなのだ、帰ってきた総士に会えるのは。
声が聞こえるのも、感情が共有されるような感覚も、その姿が見えるのも。
一騎はまた思わず溢れそうになる涙を堪えて前方の敵に集中する。

二年前肉体が消失した総士は、僅かに破壊されたシステム内にその思念が残っていたらしい。
それを二年間保存し研究を重ねた結果、アルヴィスは再度総士の意識として構築することに成功した。
そして新しいジークフリードシステムそのものとして総士は一騎のもとに帰ってきた。
肉体こそ存在しないものの、ファフナーに乗りシステムに接続すれば、ちゃんと声も姿も確認できる。
二年間、思うように動かない身体とほとんど何も認識できない視界の中にいた一騎には、
それだけでも十分と思えるほど、その総士の存在が何よりも嬉しかった。
この二年間、孤独で徐々に苦痛となり始めていたのが嘘のように、戦闘の際の強い気持ちが戻った。
総士の存在が自分の中でどれだけ大きかったのかを改めて思い知らされた。

けれど一方で、一騎は不安と焦燥感に駆られていた。
ファフナーに乗ればその分だけ同化現象が進行する。
戦闘時以外はほとんど治療に専念しているというのに、二年前と比べて良くなるどころか少しずつ
不自由な範囲が広がる身体は、いつまで持つのだろうかと嫌でも考えてしまう。
戦って自分が消えることに未練など感じたこともなかった。
でもそれは、総士がまだここにいなかったからそう思えたのだと、システムの中だけであっても
自分のもとに総士が帰ってきてしまった今、このままいつか消えてなくなるのがとてつもなく怖くなった。

そんなことを思うと、知らずと涙が溢れる。
戦闘後の廊下で一騎は人知れず涙を流した。



「随分泣き虫になったんだな」



ふと、聞こえるはずのない声が聞こえて一騎は顔を上げた。
目をこらしたところで大して機能するはずもないのはわかっていたが、辺りを見回す。
するとまた声が聞こえた。

「目、閉じて」

言われるがまま目を閉じた瞬間、一騎はびっくりして思わず目を開けそうになってしまったが、
「閉じてろって」という声にびくりとしてぎゅと目を瞑ったままにする。

そこには、総士がいた。
一騎の目の前に屈みこんで、涙が流れていた頬にそっと手を伸ばす。
触れる感触とその温もりが、待ち焦がれ続けたそれで、一騎はまた涙が溢れてくるのを止められなかった。

「ほんと、泣き虫だな」

と苦笑する声が聞こえたかと思うと、ふわりと何かに包まれる感触。
それが総士の腕だということに気付くまで数秒かかってしまったのがなんだか恥ずかしいけれど、
いつでもピンと糊づけされていた総士の制服が、二年前と変わらないのが懐かしくて嬉しくて、
一騎はまた泣きそうになって「ごめん」とだけ呟いた。
一騎が泣きやむまで、総士はそのまま抱いていてくれた。

それが、この奇妙な時間の始まりだった。

一騎がひとりでいる時、目を閉じると総士は現れる。
殆ど見えていないのだから目を開けてたって変わりはないのだけれど、なぜかいつも目を閉じている時だった。
そして、そこに現れる総士の感触は全てが本当のようで、嬉しいのに戸惑ってしまう気持ちもある。
システム内でしか総士の意識は保っていられないのだと聞いたのに、どうして総士はここにいるのかと。
待ち焦がれた自分の幻想なのではないかと何度も疑ったが、その度に総士自身に否定されてしまった。
いまだに信じられない気持ちも半分くらいあるけれど、単純に総士に会えることが一騎は嬉しかった。
身体の不自由な一騎がひとりにさせてもらえる時間は限られていたが、それでも構わなかった。

「ありがと、総士、おかえり」

一騎は小さく呟いて、目を開けた。

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