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蒼穹のファフナー文章(ときどき絵)サイト
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君と僕とあの夏の日と6
「あんなに監督のお気に入りだった真壁も怪我した途端に見向きもされなくなってさ」

いい気味だよね?と吐き捨てると一騎を取り囲む男子生徒達は一斉に嘲り笑った。

昼休みの空き教室、一騎は呼び出されてそこに向かった。
一騎自身にではなくクラスメイトに言伝を残したらしい3年生は名前も名乗らずに帰ったらしい。
背格好を聞かされたが部活の先輩にも思い当たるふしがなく一騎は誰なんだろうと不思議に思いつつも
時間通りにその部屋へと着いた。
ガラリとドアを開けるも空き教室の中には人一人見当たらなくて、少し時間が早かったかな、と窓の外を
ぼんやりと眺める。
外は真っ青な夏の空が広がっていて、きらきらと太陽光の反射する木々の葉が眩しい。
思わず目を細めて見ていると、背後でバタンとドアの閉まる音がした。

「ほんとに来たんだ?噂に漏れず真面目なんだね」

声がして振り返れば見慣れない顔の上級生が3人、言われた言葉の意味がわからずに見つめ返すと
彼らはつかつかと足早にこちらへ迫ってきてあっという間に一騎を取り囲んだ。
一騎よりも10cm以上は身長があるかと思われる彼らが3人も周りに立つと、やたらと威圧感がある。
俺らのこと、見覚えないかなぁ?とにやけて笑う上級生達に、「すみません」と小さく返せば、
ドンっ、と突き飛ばされて一騎は床に尻もちをついた。

「悲しいなぁ、同じバレー部なのに」

と彼らの一人は言って一騎の前髪を掴むとぐい、と引っ張り上げる。
思わず声が漏れそうになったが一騎は必死にそれを我慢すると、痛い?と楽しそうに聞いてくる。
答える気にもならず一騎は早く満足して帰ってくれよと心に思ってわざと伏し目がちに彼らのことを見なかった。
そういえば中学の頃もあったな、と一騎はその出来事を思い出す。
さすがに部活のない小学校では何も無かったが、中学になって運動部に所属した途端、今回のような事に見舞われた。
同じ部活の上級生らしき生徒達に囲まれて散々嫌味を言われた揚句、終いには一発殴られた。
何か言ったところで状況は悪化する一方だと、一騎は頑なに口を閉ざして上級生達の気が済むのをひたすら待ち、
殴られた勢いで地面に倒れたまま面倒なので動かなかったら、向こうが勝手に勘違いして逃げるように立ち去って行った。
大体そういうことをするのは幽霊部員のような奴らだ、と一騎は思う。
毎回部活に来ている先輩達なら覚える気なんてなくても覚えてしまうし、だからこそぱっと見でわからないのは
部活に来ない単なる所属員なのだろうと。
そもそも練習する気もない奴らにどうこう言われる筋合いはないと思うのだが、1年生ということもあってか
力でねじ伏せたい対象になりがちなんだろうな、とさっきからやたらと口汚く罵る上級生達の声を聞きながら思った。

「お前、聞いてんの?」

掴まれた前髪を更にぎゅっと引っ張られる。
まずい、と思って一騎は初めて目の前の人間と目を合わせた。
なに、その目、と小さく呟かれたかと思うと、

「っァあああっ…」

一騎の口から悲鳴が上がる。目の前の彼が一騎の髪を掴んだまま床に頭を打ち付けたのだ、それも右目の方から。
口を開いたまま荒い呼吸を繰り返している一騎を見て、もっと痛くしてあげようか?と上から声が降ってきたかと思うと、
衝撃で緩くなった包帯の間から指が入り込み、右目に当てたガーゼの上から強く力を込められる。

「いっ…」

声だけは出すものかと思っていた一騎の口から激しい痛みにうめき声が漏れる。
その様子を見て笑う上級生達に、もう本当にやめてくれと一騎は祈るような気持ちで時間が過ぎるのを待つ。
まだ押し当てられた指には力が込められたまま彼らの一人は言った。

「見えなくなればいいのに」

そうしたら輝かしい成績も終わりだね、と嘲笑って指先をぐりぐりと押し付けるその声に一騎は今まで感じたことのない
恐怖が背筋を駆け上がっていくのを感じる。
嫌だ、やめてくれと心の底から思うのになぜか負けるような気がして口には出せず、今となっては痛みよりも恐怖心が
勝ってしまいには身体が震えだしそうで嫌だった。
相変わらず親指の腹がガーゼの上を這いずり回って、いつそれに思い切り力が込められるのだろうと本気で思ってしまう。
ごめんなさい、思わずその言葉が口をついて出そうになった時、廊下の方で何やら声が聞こえ始めた。

「やべ、誰か来た」

急に押さえつけられていた手がなくなり激しい痛みが少しだけ和らぐ。
上級生達は相当焦っているらしくそわそわと倒れている一騎の傍から離れると、誰にも言うなよ、とありきたりな
捨て台詞を吐いて立ち去った。
助かった、と一騎は廊下の近付いてくる声に心底感謝したが痛みが酷くて起き上がる気になれない。
時計が見えなかったので休み時間があとどれくらいなのかわからなかったが、最悪チャイムが鳴ってから走ればいいと
到底走れる状態でないまま考えた。
すると、ガラ、とドアの開く音がする。
この部屋に用だったのかよ、と一騎は心の中で舌うちをした。が、起き上がれない以上どうすることもできない。
ドアを開けた人物は倒れていた一騎に気がついたらしく、おい、お前大丈夫か?と駆け寄ってきた。

「…真、壁か?」

突然名前を呼ばれて驚いた一騎は閉じていた目を開けて目の前の人物を見上げる。
生徒会長、だと一騎はぼんやりする頭で確認した。
ネームプレートには3B将陵 僚としっかり記載されており、その人物が間違いなく会長であることを告げていて、
なんか面倒な人に見つかっちゃったな、と一騎は必ず聞かれるだろう事柄について言い訳を考えた。

「起き上がれるか?」

心配そうに見つめてくる会長に「もう少しすればたぶん大丈夫ですから」と小さく答えると、右目に手を被せて
少しでも早く痛みが治まるように落ち着かせる。

「…何が、あった?」

少し間を置いて慎重に尋ねてきた声に、一騎はああやっぱり、と心の中で思ってでもうまい言い訳も思いつかず、
ただ一言「何でもないです」とだけ言った。
しかし会長がそれで引きさがるような人間じゃない事は一騎もよく知っている。
案の定彼は一騎よりも悲壮な表情を浮かべると「言えないようなことなのか?」と聞いてきた。

「すみません」

一騎はそれだけ言うと、そろそろ起き上がろうとゆっくり肘を立てる。
僚は一騎の脇の下から腕を入れて背中に回してとりあえず床に座らせると、立てるか?と小さく聞いて、
一騎が頷くとぐい、と腕に力を込めて立ち上がらせた。
そのまま自分の肩に一騎の腕を掛けるとドアを目指して歩き出す。

「皆城には、言っても構わないか?」

一騎が横を見ると、僚は少し寂しげに笑って、幼馴染の方がいいんじゃないかって思って、と言う。
会長が自分と総士が幼馴染だということを知っていたのも驚きだったが、その細やかな心遣いになんだか心がほっとする。
「はい」と見上げれば彼は微笑んで、とりあえず保健室だな、と言って廊下に出た。

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