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君と僕とあの夏の日と10
翌日の放課後、生徒会を欠席して一騎のクラスへと足早に向かった総士は、一騎が午前中に
体調を崩して保健室に行ったことを聞き、そのまま保健室へと向かった。

「え?帰ったって」

息を切らしながら総士は言って、目の前に座る保健医を見つめる。

「お昼ちょっと前に気分が悪くなったって、たぶん右目の怪我のせいだと思うけど」

と保健医は言うと、何か用でもあったの?と怪訝そうに総士を見上げた。

「一人で帰ったんですか?」

「…確か、家の方が迎えに来てたと思ったけど」

「でも、あいつの父親は」

「いいえ、お兄さん?なのかしら、大学生くらいの男の子だったわよ」

そう聞いた途端、総士は背筋が凍りつくような感覚に襲われる。
たぶん、早退しなければならないほどに体調の悪かった一騎は、一人で帰ることが出来ずに、
家に連絡したところ、たぶんその大学生が親代わりに一騎を迎えに来ることになったのだろう。
総士は時計を見た、帰ったと思われる時間からもう3時間以上過ぎている。

早く、行かなければ。

何かあったらなんて考えたくもなかったが、総士は鞄を持つ手に力を込めると、
保健医に挨拶をしてから、すぐに廊下を駆け出した。






「一騎の友達の皆城くんだよね?」

そう言って出てきた青年は総士に微笑みかけると、どうぞ、と言って玄関に総士を招き入れた。
てっきり居留守でも使われるかとばかり思っていた総士はなんだか拍子抜けして、
「お邪魔します」と頭を下げながら、促されるままにリビングのソファに腰を下ろす。

「あの、一騎は?」

おそるおそる本題に入ると、目の前の青年は少し困ったように眉根を寄せて口を開いた。

「やっぱり気分がすぐれないみたいで、ずっと部屋で寝てるんだ」

だから悪いけど、今日はここで帰ってくれるかな?と一見優しい口調で青年は総士に告げる。

「あの、でも…」

咄嗟に言い訳を考えようと総士が口ごもった時、制服のポケットに入れていた携帯が震えた。
失礼します、と言って取り出すとメールが着信したということを告げるランプがちかちかと点灯している。
総士は手早く携帯を開けると、確認ボタンを押した途端に一瞬、息を飲んだ。




_________________

title:無題


subject:
たすけて、おねがい



_________________





それは、壁一枚隔てた隣の部屋で寝ているはずの、一騎からのメールだった。
総士は慌てて携帯を閉じると、「ちょっと、失礼します」と言って立ち上がる。
青年の驚いた顔が見えたような気もしたが、そのまま早足で一騎の部屋に行くと勢いよくドアを開けた。

「…一騎っ!!」

目を疑いたくなるような光景に、総士は息が詰まりそうな思いがする。
そこには、両手両足を縛られて口に布を噛まされた一騎が、床に横たわっていた。
総士の声に一騎はゆっくりとこちらを見上げる。
何か言いたげに布で塞がれた口を動かして、その目からぼろぼろと涙を零した。
総士は慌てて一騎に近寄ると、身体の動きを封じていたものを全て取り去る。
途端にゲホゲホと咳込む一騎を横抱きにすると、ドアの前に立つ青年を睨みつけた。

「これは、どういうことですか?」

怒りに震えながら静かに総士が言うと、立ち尽くした青年は「違う、一騎が…」と言い淀む。

「言い訳なんて要りません、ずっとこうやって、一騎に暴力を振るってきたんでしょう?あなたは」

「…違うっ!」

即座に否定した青年に総士は更に追い打ちをかけるように言葉を紡いでいく。

「僕は他にも、一騎の身体にあなたがつけた傷があるのを知っています」

「…っ」

総士は一呼吸置くと、未だ震えたままの一騎の身体を強く抱き締めて青年に言い放った。

「一騎の父親にこのことを言います。もう二度と、あなたは一騎の前に現れないでください」

総士のが言い終わると、立ち尽くした青年は不安定に視点を変えながら段々と後ずさる。
そしてそのまま後ろのドアにぶつかったかと思うと、自分でそれに驚いたのか、慌てて部屋を飛び出して行った。

…とりあえず、終わった。

総士はほっとして、溜息のように長い息を吐き出す。
自分があんなにまであの青年に強く事実を突き付けることが出来るなどとは正直思ってもみなかった。
ただ、あまりにも酷い一騎の状態を見て柄にもなく逆上してしまい、逆に冷静さを欠かずに対処出来てしまった。
でも、その安堵もつかの間、腕の中の一騎の震えが治まる気配は一向にない。
何時間も不自然な姿勢で縛られ続けたせいなのか、両手両足とも力が全く入っていないようだった。
直接縛られていた箇所は、皮膚が酷く擦り向けて出血している。
これだけでも消毒しなければ、と頭では早く早くと思うのだけれど、
こんなに震えた一騎を一瞬でも離すことにとてつもなく躊躇してしまう。

「もう、大丈夫だから」

不意に口をついて出てしまった言葉を繰り返しながら、総士は一騎を抱き締め続ける。
決して声を上げずに泣き続ける一騎を見ては、総士の目にも涙が浮かんで今にも零れ落ちそうだった。

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