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君と僕とあの夏の日と12
「そーし、朝ごはん出来たよ」



リビングの方から一騎に声が聞こえて総士が部屋から出ると、
テーブルの上には出来立ての朝ご飯が並んでいる。
一騎はというと、どこから見つけたのか制服の上にエプロンをして、
二人分のお味噌汁をお椀によそっているところだった。
ばたばたと席に着いてしまったものの、あのお椀二つくらい持ってきた方がよかっただろうかと
なんだか落ち着かなくてじっと一騎の方を見つめてしまっていたのか、
視線に気づいた一騎と目が合ってしまって、総士はなんだかやけに気恥ずかしくなってしまう。
そうしているうちにお椀を持った一騎も席に座り、「いただきます」と妙に揃った声で、
二人は朝ご飯を食べ始めた。






あの事件の後から、一騎は総士の家に泊まるようになった。
本人の希望もあって、父親には「勉強を教える」といういかにも学生めいた言い分を伝えて。
来たばかりの日はお互い気が動転していて、特に一騎はほとんど眠ったまま、丸一日ろくに会話もしなかった。
が、一日経ってからの一騎は何事もなかったかのようにてきぱきと総士の家を動き回り、
なんて人間的じゃない生活を送ってたんだ、と呆れながら流れるように家事をこなしていった。
なんだかその手際の良さに面食らってしまって総士は始終ぼんやりと一騎の行動を見つめていたが、
あえて気遣う言葉を掛けることはしなかった。
深く抉られた傷がすぐに治るだなんて思わない。
けれど、最初から手を差し伸べてほしいとは一騎は思わないはずだ。
苦しくてもたぶん一人で耐える、でも、どうしても耐えられなくなった時には一緒にいてやればいい。
そのサインはきっと、今の自分になら見つけられるはずだと総士は思う。






「もしかして、甘いのがよかったか?」

「え?」

「なんかずっと、黙ったままだったから」

そう言ってなんだか寂しげな顔をした一騎に総士ははっとする。
いただきます、とは言ったものの、何年振りだかわからない朝食に
しかも自分以外の人間がいるだなんてなんだかにわかにこの状況が理解出来なくなって、
何も話すことなく食べ始めてしまった。
手元には、半分に割った出汁巻き卵の切れ端。
そういや、これ一騎が作ったんだったよな、とその味と形の良さに改めて感心してしまう。
あんまりにも普通に美味しいものだから、なんだか普通に食べ進めてしまったと総士は内心ちょっぴり反省する。

「口に、合わなかったらごめん」

と、またも眉を下げて言う一騎に「そんなことないって…ただ」と総士は慌てて口を開いた。

「ただ?」

「久し振りすぎて、ぼーっとしてた」

総士が本当のことを言うと、「不健康すぎ」と言って一騎はくすくすと笑う。

「僕じゃ、こんなに美味しいのは作れないからさ」

「え?」

「ありがとな、一騎」

まっすぐ見つめたまま総士がにこりと笑うと、一騎は一瞬固まってすぐにちょっと横を向くと、
「…これからは、毎日作ってやるから」とぼそりと呟いた。

「楽しみにしてる」

「ちゃんと、健康ってものを考えろよな」

「お前もな」

「…うるさいよ、総士」

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