蒼穹のファフナー文章(ときどき絵)サイト
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2024.11.22 Friday
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君と僕とあの夏の日と20 end
2011.11.20 Sunday
その数日後、一騎はバレー部の練習に復帰することとなった。
怪我のせいで約一ヶ月近く休んでいたのだが、普段の調子に戻るのに一週間と時間はかからなかった。
もっとも、一騎は遅れと勘を取り戻すために朝から自主練をかかさなかったし、周りの部員達も協力してくれた。
そんなに必死に練習したのも、監督が一騎のためにレフトのポジションを空けておいてくれたからだった。
「おつかれさまでした」
一騎は深く一礼をすると体育館を後にする。
そして小走りに廊下を進むと、校門で待っているだろう人物のもとへ向かった。
走りながらちらりと見上げた時計は午後5時を少し回ったところで、 もしかしたら結構待たせちゃったかな、とちょっと申し訳ない気持ちになる。
「ごめん、待った?」
後ろから声をかけると、校門の柱の所からひょい、と顔がのぞく。総士だ。
突然吹いてきた風が総士の髪をふわりと巻き上げてオレンジ色にきらきらと輝いた。
なんか、こういうの、似合うよなぁと一騎はぼんやりと総士を見つめていると、総士は怪訝そうな顔をする。
「疲れてるのか?」
「えっ?」
「急にぼんやり立ち止まってるから」
「あ、いや、そうじゃなくて、待たせたかなぁと思って、ごめん帰ろ」
一騎は慌てて言うと、総士の背中をぽんと押した。
「試合は、出られそうなのか?」
駅までの道を歩いていると、総士はおもむろに口を開く。
「うん、監督がポジション空けててくれて、さ」
「そっか」
「あ、土曜、もし空いてたらさ」
「もちろん、そのために空けてあるよ」
見に行くから、と総士は言って微笑んだ。
まじまじと目が合ってしまった一騎は、なんだか恥ずかしくなって下を向いてしまう。
「一騎?」と呼びかける総士の声にまた心配が混ざっているような気がして一騎はぶんぶんと首を振ると、 「約束だからな?」 と言って今度は総士に笑いかけた。 そのまま一騎は続ける。
「この一ヶ月でさ、色々変わったような気がする」
「ん?」
「なんかさ、見えなかったものが見えたり、一人じゃないって思えたり」
「一騎」
「全部、総士のおかげかもしんない」
そう言って一騎は総士を見上げると、ちょっと戸惑ったような顔がそこにはあって、 なんだか少し可笑しいような気分になる。
すると、総士が口を開いた。
「高校に入ってから、一騎と話す時間が少なくなってどうしてるのかなってずっと思ってたんだ」
「けど、変わってなくて良かった」
「え?」
「色々あって、一騎が大変だったのはわかってるつもりなんだけど、本当は僕の方が一騎の存在に 助けられていたのかもしれない」
そこまで言うと、総士はこちらを向いてまた少しだけ微笑む。
一騎はその意味がわからなくて、「どうして?」と小さく呟いた。
総士はそんな一騎を見て「ごめん、言葉が足りなかった」と言うとまた続ける。
「学校からの帰り道がこんなに楽しいなんて今まで思えなかった、たぶん、一騎がいたからだと思う」
「…なんか、そんな風に言われると照れるけど、でも、うれしいな」
「本心だぞ?」
「わかってるよ」
一騎は思わず緩んでしまう顔を抑えきれずに口元を緩めると、そっと、総士の腕に自分の腕を絡める。
そして総士に向かって言った。
「これからも、一緒に帰っていいかな?」
怪我のせいで約一ヶ月近く休んでいたのだが、普段の調子に戻るのに一週間と時間はかからなかった。
もっとも、一騎は遅れと勘を取り戻すために朝から自主練をかかさなかったし、周りの部員達も協力してくれた。
そんなに必死に練習したのも、監督が一騎のためにレフトのポジションを空けておいてくれたからだった。
「おつかれさまでした」
一騎は深く一礼をすると体育館を後にする。
そして小走りに廊下を進むと、校門で待っているだろう人物のもとへ向かった。
走りながらちらりと見上げた時計は午後5時を少し回ったところで、 もしかしたら結構待たせちゃったかな、とちょっと申し訳ない気持ちになる。
「ごめん、待った?」
後ろから声をかけると、校門の柱の所からひょい、と顔がのぞく。総士だ。
突然吹いてきた風が総士の髪をふわりと巻き上げてオレンジ色にきらきらと輝いた。
なんか、こういうの、似合うよなぁと一騎はぼんやりと総士を見つめていると、総士は怪訝そうな顔をする。
「疲れてるのか?」
「えっ?」
「急にぼんやり立ち止まってるから」
「あ、いや、そうじゃなくて、待たせたかなぁと思って、ごめん帰ろ」
一騎は慌てて言うと、総士の背中をぽんと押した。
「試合は、出られそうなのか?」
駅までの道を歩いていると、総士はおもむろに口を開く。
「うん、監督がポジション空けててくれて、さ」
「そっか」
「あ、土曜、もし空いてたらさ」
「もちろん、そのために空けてあるよ」
見に行くから、と総士は言って微笑んだ。
まじまじと目が合ってしまった一騎は、なんだか恥ずかしくなって下を向いてしまう。
「一騎?」と呼びかける総士の声にまた心配が混ざっているような気がして一騎はぶんぶんと首を振ると、 「約束だからな?」 と言って今度は総士に笑いかけた。 そのまま一騎は続ける。
「この一ヶ月でさ、色々変わったような気がする」
「ん?」
「なんかさ、見えなかったものが見えたり、一人じゃないって思えたり」
「一騎」
「全部、総士のおかげかもしんない」
そう言って一騎は総士を見上げると、ちょっと戸惑ったような顔がそこにはあって、 なんだか少し可笑しいような気分になる。
すると、総士が口を開いた。
「高校に入ってから、一騎と話す時間が少なくなってどうしてるのかなってずっと思ってたんだ」
「けど、変わってなくて良かった」
「え?」
「色々あって、一騎が大変だったのはわかってるつもりなんだけど、本当は僕の方が一騎の存在に 助けられていたのかもしれない」
そこまで言うと、総士はこちらを向いてまた少しだけ微笑む。
一騎はその意味がわからなくて、「どうして?」と小さく呟いた。
総士はそんな一騎を見て「ごめん、言葉が足りなかった」と言うとまた続ける。
「学校からの帰り道がこんなに楽しいなんて今まで思えなかった、たぶん、一騎がいたからだと思う」
「…なんか、そんな風に言われると照れるけど、でも、うれしいな」
「本心だぞ?」
「わかってるよ」
一騎は思わず緩んでしまう顔を抑えきれずに口元を緩めると、そっと、総士の腕に自分の腕を絡める。
そして総士に向かって言った。
「これからも、一緒に帰っていいかな?」
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