蒼穹のファフナー文章(ときどき絵)サイト
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パラダイスロスト6 end
2011.11.20 Sunday
scene:25
総士は渾身の力を込めてマークエルフをニヒトへと体当たりさせる。
瞬間、ザインとの間に出来た少しの空間に右足を割り込ませ機体を反転させると、
両腕でニヒトを抱え込んで動作を封じた。
即座にエルフのフェンリル作動キーの入力を終了させる。
総士は呟いた。
「終わりだ、ニヒト」
次の瞬間、けたたましい音を上げながら爆発した。
scene:26
「あ・・・」
目を開けると、真上には真っ青な空が広がっている。
身体はどこかに浮かんでいるかのように重力が感じられなくて、死んでしまったのか、とぼんやり思考を巡らす。
僅かに視界の隅に見えた物体がファフナーを構成していたものだと理解するまでに数秒かかった。
「脱出、できた・・・のか」
総士はぼんやりする頭で思った。
一騎は??
そう思い、辺りを見回す。
爆風に生身で曝された後の身体からは動く度に悲鳴が上がったが、今はそれどころではなかった。
そこかしこに浮かぶファフナーの残骸を掻き分ける。
やがて、その間に漂う身体が見えた。
「一騎!!」
総士は必死に泳いで一騎の元に辿り着くと、その身体を引き寄せる。
左胸に耳を寄せると、少し微弱ではあったが確かに鼓動が聞こえ安心した。
生きていた、彼も、自分も。俄かには信じられない事実だったけど、確かに存在する身体がそれを証明している。
「・・・っぁ」
「一騎、気がついたか?」
腕の中の一騎の意識が戻る。
しばらく焦点が定まらず宙を泳いだ目が総士をとらえた。
「そ・・・し?」
総士は泣きそうになるのを堪えながら笑う。
「本当に、良かった」
総士は一騎の負担にならないように抱き締める。
「護れたって言うには・・・ちょっと僕達ぼろぼろすぎるけど」
「っていうかごめん、これは僕のせいだ」
そう言って、一騎の赤く染まった両目を見つめた。
なぜか、以前のような嫌悪感がその赤に生じる事は無い。
「おれ・・・ぃきて、る、の?」
苦しそうな一騎が途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
「生きてるよ、君も、僕も」
実はフェンリル作動の瞬間、脱出キーを入力した。外部動作が可能になっているならザインも入力出来る筈だと、
半ば賭けのような気持ちでエルフの入力をザインへも転送させた。
うまく行くかなんて考えたくなかった、3秒しかなかった。
「神様も、ちょっとはいい奴だったんだな」
絶対に頼るものか、と思っていた神様に、気付いたら祈っていた。
一騎だけは、とそう思ったのは確かなんだけれど、ついでに自分まで助けてくれたらしい。
総士は知らず笑顔になった。
「もうすぐ、救援の船が来る、苦しいだろ?眠っていた方がいいよ」
ん、と微かに返事をして一騎は意識を手放してしまった。
その顔を見つめて総士は言う。
「もうこんな事出来るって思わなかったんだけど、救出成功ってことで・・・いいよね?」
そう言って、総士は一騎に口付けた。
scene:27
何も考えられなかった、身体は全然動かなかったし、どんどん自分が無くなって、
もうすぐ、彼らと同じモノになってしまうんだろう、
そう思うと、怖くて怖くて仕方がなかった。
もう、会えないんだなって。何も言えなかった事がすごく悔しかったけど、
言えなくて、良かったのかもしれない。
彼に、忘れてもらうためには。
止められなかった、だから、得体の知れない怪物になった俺を殺してほしかった。
その時に迷いが無いように、「友達」なんかじゃ無いように。
でもせめて苦しくないように心臓を一突きで殺してほしいなんて、最後のわがままを、そっと願った。
「 」
声が、聞こえた気がした。
なんだか暖かいような気持ちになって、まるで誰かに抱き締めてもらっているようだと思った。
「・・・ぁ」
目の前が急に明るくなる。
差し込む光が眩し過ぎて頭がくらくらする。
「一騎」
徐々に明瞭になる視界が捉えたのは、もう会えないと思った彼だった。
scene:28
「一騎、気分はどう?」
一騎が彼をその視界にしっかり捉えるまで動かなかった総士は、一騎と視線が合うと、穏やかに微笑んだ。
一騎はまだ頭がぼんやりして身体の感覚も全く無かったが、
目の前の総士も他人の心配を暢気にしていられる程健康そうには見えない。
額に巻かれた包帯、制服で隠れてはいるが首と手首に見える包帯も見るに耐えない程痛々しい。
「そ、し・・・こそ」
長らく眠っていたせいか声が掠れて思ったように言葉が出なかったが、
それでも彼はこちらの言いたい事を察して一騎ほどじゃないから大丈夫、と言った。
その大丈夫が、大丈夫じゃないから心配なんだ
と言いたい所だが、生憎そんなに長く話せる程息が続きそうにもない。
咎めるような目線を気付かない振りして総士は一騎の肩をぽん、と叩く。
「ずっと、守れなくてごめんって思ってた」
一騎が目を見開くと総士は、だから、約束、と言う。
「島中のケーキ、買ってきたよ」
彼が指さしたベッドサイドのテーブルには、色とりどりのケーキが所狭しと並んでいた。
「チョコは、ちゃんと抜いたよ」
総士は笑う。だから、
「針千本は、許してくれないかな?」
覚えてて、くれた。
一騎は信じられない思いで総士を見た。
総士は、ちょっとバツが悪そうな顔をしてこちらを伺っている。
一騎は涙を浮かべながら笑って、そして言った。
「お目覚めのキスは?」
わかったよ、お姫様。
そう呟いて総士は一騎の上に覆い被さると、軽く触れるだけのキスをする。
もっと長いのしてほしかったら、早く元気になれよ、と言って総士は一騎の頬を撫でた。
総士は渾身の力を込めてマークエルフをニヒトへと体当たりさせる。
瞬間、ザインとの間に出来た少しの空間に右足を割り込ませ機体を反転させると、
両腕でニヒトを抱え込んで動作を封じた。
即座にエルフのフェンリル作動キーの入力を終了させる。
総士は呟いた。
「終わりだ、ニヒト」
次の瞬間、けたたましい音を上げながら爆発した。
scene:26
「あ・・・」
目を開けると、真上には真っ青な空が広がっている。
身体はどこかに浮かんでいるかのように重力が感じられなくて、死んでしまったのか、とぼんやり思考を巡らす。
僅かに視界の隅に見えた物体がファフナーを構成していたものだと理解するまでに数秒かかった。
「脱出、できた・・・のか」
総士はぼんやりする頭で思った。
一騎は??
そう思い、辺りを見回す。
爆風に生身で曝された後の身体からは動く度に悲鳴が上がったが、今はそれどころではなかった。
そこかしこに浮かぶファフナーの残骸を掻き分ける。
やがて、その間に漂う身体が見えた。
「一騎!!」
総士は必死に泳いで一騎の元に辿り着くと、その身体を引き寄せる。
左胸に耳を寄せると、少し微弱ではあったが確かに鼓動が聞こえ安心した。
生きていた、彼も、自分も。俄かには信じられない事実だったけど、確かに存在する身体がそれを証明している。
「・・・っぁ」
「一騎、気がついたか?」
腕の中の一騎の意識が戻る。
しばらく焦点が定まらず宙を泳いだ目が総士をとらえた。
「そ・・・し?」
総士は泣きそうになるのを堪えながら笑う。
「本当に、良かった」
総士は一騎の負担にならないように抱き締める。
「護れたって言うには・・・ちょっと僕達ぼろぼろすぎるけど」
「っていうかごめん、これは僕のせいだ」
そう言って、一騎の赤く染まった両目を見つめた。
なぜか、以前のような嫌悪感がその赤に生じる事は無い。
「おれ・・・ぃきて、る、の?」
苦しそうな一騎が途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
「生きてるよ、君も、僕も」
実はフェンリル作動の瞬間、脱出キーを入力した。外部動作が可能になっているならザインも入力出来る筈だと、
半ば賭けのような気持ちでエルフの入力をザインへも転送させた。
うまく行くかなんて考えたくなかった、3秒しかなかった。
「神様も、ちょっとはいい奴だったんだな」
絶対に頼るものか、と思っていた神様に、気付いたら祈っていた。
一騎だけは、とそう思ったのは確かなんだけれど、ついでに自分まで助けてくれたらしい。
総士は知らず笑顔になった。
「もうすぐ、救援の船が来る、苦しいだろ?眠っていた方がいいよ」
ん、と微かに返事をして一騎は意識を手放してしまった。
その顔を見つめて総士は言う。
「もうこんな事出来るって思わなかったんだけど、救出成功ってことで・・・いいよね?」
そう言って、総士は一騎に口付けた。
scene:27
何も考えられなかった、身体は全然動かなかったし、どんどん自分が無くなって、
もうすぐ、彼らと同じモノになってしまうんだろう、
そう思うと、怖くて怖くて仕方がなかった。
もう、会えないんだなって。何も言えなかった事がすごく悔しかったけど、
言えなくて、良かったのかもしれない。
彼に、忘れてもらうためには。
止められなかった、だから、得体の知れない怪物になった俺を殺してほしかった。
その時に迷いが無いように、「友達」なんかじゃ無いように。
でもせめて苦しくないように心臓を一突きで殺してほしいなんて、最後のわがままを、そっと願った。
「 」
声が、聞こえた気がした。
なんだか暖かいような気持ちになって、まるで誰かに抱き締めてもらっているようだと思った。
「・・・ぁ」
目の前が急に明るくなる。
差し込む光が眩し過ぎて頭がくらくらする。
「一騎」
徐々に明瞭になる視界が捉えたのは、もう会えないと思った彼だった。
scene:28
「一騎、気分はどう?」
一騎が彼をその視界にしっかり捉えるまで動かなかった総士は、一騎と視線が合うと、穏やかに微笑んだ。
一騎はまだ頭がぼんやりして身体の感覚も全く無かったが、
目の前の総士も他人の心配を暢気にしていられる程健康そうには見えない。
額に巻かれた包帯、制服で隠れてはいるが首と手首に見える包帯も見るに耐えない程痛々しい。
「そ、し・・・こそ」
長らく眠っていたせいか声が掠れて思ったように言葉が出なかったが、
それでも彼はこちらの言いたい事を察して一騎ほどじゃないから大丈夫、と言った。
その大丈夫が、大丈夫じゃないから心配なんだ
と言いたい所だが、生憎そんなに長く話せる程息が続きそうにもない。
咎めるような目線を気付かない振りして総士は一騎の肩をぽん、と叩く。
「ずっと、守れなくてごめんって思ってた」
一騎が目を見開くと総士は、だから、約束、と言う。
「島中のケーキ、買ってきたよ」
彼が指さしたベッドサイドのテーブルには、色とりどりのケーキが所狭しと並んでいた。
「チョコは、ちゃんと抜いたよ」
総士は笑う。だから、
「針千本は、許してくれないかな?」
覚えてて、くれた。
一騎は信じられない思いで総士を見た。
総士は、ちょっとバツが悪そうな顔をしてこちらを伺っている。
一騎は涙を浮かべながら笑って、そして言った。
「お目覚めのキスは?」
わかったよ、お姫様。
そう呟いて総士は一騎の上に覆い被さると、軽く触れるだけのキスをする。
もっと長いのしてほしかったら、早く元気になれよ、と言って総士は一騎の頬を撫でた。
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