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蒼穹のファフナー文章(ときどき絵)サイト
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パラダイスロスト5
scene:19

「アルヴィスの全ての隔壁を遮断して下さい、今すぐ」

総士は走りながら真壁司令に伝える。我ながら今までで一番余裕の無い声だ、なんて思う。
目の前が急に真っ暗になって、そして真っ白に変わるような。
数日前の、自分が何も知らなかった頃に見せた彼の笑顔がフラッシュバックする。
エラーの発生は偶然じゃなく必然だったのではないかと根拠も無いのに自分に問いかける。
なんとなく、全てが間に合えば、全てはまたやり直せるような気がしていた。

真壁司令の声が響く。
ファフナーは初期起動がかからないよう外部からOSを書き換え動作をロックさせた。
もうすぐ隔壁も全て遮断されるだろう。

でも、一番消えて欲しい嫌な胸騒ぎは徐々に存在を大きくしていく。
外れていてほしい思いが確信に変わっていく気がする。

総士が格納庫に到着する寸前、館内放送の声が響いた。




「第3隔壁、突破されます!」




外部ロックされたファフナーが動いただと?
総士は信じられない気持ちでドアロックにIDカードを通す。
間もなく、機体の照合が確認される筈だ。たぶんそれはあの、白い機体に違いない。





「機体の照合確認」






聞きたくない。
総士はドアが開かれると目の前にあってほしい筈のファフナーを見上げることが出来なかった。





「マーク、ザインです」






告げられた声に総士は愕然として顔を上げる。
そこにある筈の白い機体の場所はぽっかりと開いていた。

「そ・・・んな」

総士はガタ、と膝をつく。

「お前は、二度も、僕の前からいなくなってしまうのか?」

総士は涙を堪えながら呟いた。





「間に、合えよっ・・・!!」


今にも振り切れそうな数値を視界の隅に確認しながら一騎はどんどん加速して海上を飛行する。

なるべく、離れるんだ。

その両目は金色に光っていた。





scene:20

1年振り、だ。

総士はシートに身を沈めると未だ整理のつかない頭で思った。
本当なら自分が乗る筈の機体、本当なら自分が今も戦っている筈で、
本当ならあの一騎には、会っていなかったのかもしれない。

彼を兵器に変え、そして裏切らせたのは僕なんだろうか。

「・・・っ痛」

1年振りの接続は、忘れていた痛みを思い出させる。
同時に、この痛みを1年間も彼に押し付けていたのかと。何でもないよ、と笑っていたけど。

あの笑顔は、取り戻せるのかな。

「君を、必ず、止める」

総士は初期起動のかかった機体と意識をリンクさせる。すぐに機体は本格的に起動し、総士は両手に力を込めた。

「僕が、止める」

マークエルフは、発進シークエンスへと移行した。





scene:21

「来るなって!!」

一騎は力の限り叫ぶ。
次々と遅い来る攻撃を尋常でない早さで全て無効化しながら目の前を強く睨みつけた。

演算式を転送しては爆破させる、いくらそれをしても一向に減る気配を見せないフェストゥム。

一騎は両手を思いっきり握りしめると、アームから放たれたエネルギー砲が広範囲のフェストゥムを一気に消滅させる。

「邪魔、すんなよっ!」

徐々にフェストゥムはマークザインとの距離を近づけ始める。こうなったら6射全部使って消すしかないな、と思った瞬間。

「・・・っぁ」

急に、一騎は頭の中が真っ白になった。マークザインの動きも止まる。
その一瞬を狙って、フェストゥムが一斉に攻撃を仕掛け出した。

マークザインの四肢を拘束し、動作を封じると、コックピット付近に攻撃が及ぶ。
ぐるぐると周囲を回っていたそれが、僅かな隙間を発見し、内部へと侵入を果たすと、瞬時に一騎の全身を拘束した。

「く・・・そっ」

声がする。
頭の中に複数の思考が入り乱れる。気管が押さえつけられて呼吸もままならない。

だめだ、どんどん意識が遠くなる。

「ひさしぶり」

耳元で声がして、一騎は目を開ける。
そこには金色の人型をした物体が、みるみるうちに人間の青年の形へと変化した。
青年はにぃ、と笑って苦しそうな一騎に近付くとその唇を強引に奪う。

「んっ・・・あ・・・ぁ」

ただでさえ酸欠状態の一騎は息苦しさに喘ぐ。
しかし、全身が拘束されているため抵抗も出来ず、やっと唇が解放された頃には、両目は焦点を合わすことすら出来なかった。

「迎えに、来たよ」

青年は笑うと、だらりと垂れた一騎の顔を無理矢理上げ、再度その唇を吸った。





scene:22

「何だよ、あれ」

マークエルフ越しに見えた光景に総士は思わず息を飲んだ。

四肢を拘束され身動きが取れなくなったマークザインに絡み付くように被さる黒いファフナー。

「あれに乗っているのは、誰だ?」

明らかに竜宮島のものではないUNKNOWNの機体に照合をかける。
「マークニヒト」と程なくしてモニターに映し出された。するとその時、

「君ひとりで僕を倒せると思ってんの?」

と強制的に通信回線を開かれた。

「おまえ・・・」

そこに映し出されたのは、全身を拘束された一騎と、見慣れない青年の姿だった。
こいつは、危険だと頭の中で声が鳴り響く。
たぶん今まで出会った敵の中で一番凶悪な部類に入るのだろうと。
接続した両手に知らず知らずと力が入る、こめかみには嫌な汗が伝って落ちる。
一騎すら敵わない相手に僕で太刀打ち出来るのだろうかと、至極真っ当で消極的な思考に支配される。

「早くしないと、この子、僕らが貰っちゃうよぉ」

そう言って青年はぐったりとした一騎の唇を舐めた。




scene:23

「くそっ・・・!!」

いくら仕掛けてもかわされる攻撃に総士は憤りを感じる。
照合をかけた時点ではじき出したニヒトはノートゥングモデル、つまりエルフと変わらない。
なのにこちらの動きを読まれているかのように攻撃は悉くかわされる。

「・・・ゃ・・・あぁ、ゃめ」

開かれたままの回線からは一騎の苦しそうな声が聞こえてくる。
総士はぎり、と歯を食いしばると目の前の黒いファフナーを見つめた。

「個体を作ったことが間違いだったんだ」

不意に青年が言った。

「な・・・にを?」

総士には意味が解らなくて尋ね返す。

「君達に利用されるフリをして、最終的に僕達は集合体として同化し、あの島を消す筈だったのに」

総士は目を見開く。

「この個体は集合体の意思に同調せず、しかも反抗し、僕達を殺していった」

「失敗作だよ」

総士は驚愕した。
一騎がマークザインと共に竜宮島を離れたのは、フェストゥムと同化し、島を襲うためだとばかり思っていた。
けれど彼は違ったのだ。
なるべく離れようと。
島を、護るために。

「なかなか意識が消えなくて困っているんだ」

青年は続ける。

「一体どんな教育をしてくれたわけ?人間は」

その時、エルフにアルヴィスからの回線が繋がった。

「皆城君」

「真壁・・・司令」

「こちらの準備は整った」

真壁司令は告げる。

「ニヒトは『否定』、ザインは『存在』だ。けれど否定は存在の概念を前提としなければそれ自体の存在は成し得ない。
ニヒトを消滅させるには」

「と、いうことは・・・」

総士は恐る恐る司令に尋ねる。
司令は表情を変えずに言った。

「ザインごと消しなさい。フェンリルの外部動作が可能となるよう元々ザインのロックは解除してある」

真壁司令は続けた。

「一騎ごと、消しなさい、皆城君」




scene:23

「あの日一騎は」



いつものように公園で遊んで、家の前まで送って、別れて。
でもその日はなぜか、
ばいばい
その一言が酷く怖く思えて、聞こえた瞬間振り返った。

けど、彼はそこにはいなかった。
家に入ったのだろうと、そう納得させて自分も足早に家を目指したあの夕暮れ。

そ・・・うだ。

翌日、一騎の家に迎えに行ったら、彼の父は酷く慌てて、

一騎がいなくなった

そう言っていた。
島中総出で一騎を探し、やっと見つかったのはその日の夕方。
海岸に倒れていたのだ、と誰かに聞いた。
みんなでほっと安心したのも束の間、一騎の意識は一向に戻る気配を見せなかった。
目覚めたくないほど嫌な事があの間にあったのかと皆で心配し、精密検査を行うことになった。

そして、驚愕の事実が知らされることとなる。

一騎の身体を構成する殆どの物質が、フェストゥムと同質であるという事実

一騎の意識がフェストゥムの集合意識に呼応しようとしているのを無意識に自我が抑えているために
葛藤が生じ、意識が戻らないのではないかという推測が立った。

フェストゥムの集合意識から隔離し、一騎自身を早く目覚めさせなければ、との結論に至ったが、
当時の島にそんな都合の良い方法は存在などしていなかった。

「最後の被検体として、彼を私達に委ねてくれるのでしたら、彼をフェストゥムから隔離し、
自我を最大限保護すると約束します」

黒い制服に身を包んだ集団の誰かがそう言った。

皆、困惑した。
それは今後凍結される事が決定したプロジェクト推進メンバーの意見であったからだ。
しかし、幼い一騎がフェストゥムに浸食され同化し消滅してしまう事を哀れんだ総士の父親は、
お願いします、と彼らに頭を下げた。

そこで、一騎の運命は決まってしまった。

自我は保たれた。
しかしそれは兵器として完成するまでの間、ということ。
15歳になり、次第に兵器として完成して行く課程で自我は少しずつ消されて行った。

「兵器は、島にとって必要不可欠でしょう」

大人達はそれを交換条件にしてしまったのだ。

ファフナーに乗り前線で敵と戦う、そんな島の犠牲になるのは自分だと思って生きてきたのに、
その役目は一騎が請け負うことになってしまった。
彼が眠っている間に。

数日が過ぎ、一騎の移される胎槽の準備が整った。

「個体番号TISP-06ZF」

防護服に身を包んだ者がそう言い、一騎の右手の甲に06というナンバリングを施した。
完全製造体ではない特殊個体だから、区別するために任意の文字列を刻印するのだと誰かが言った。
任意なのだから刻印したい文字列があれば教えてほしいとも。
その場にいる誰もが答えられなかった。

「Kylieにしてください」

総士はそう答えていた。

君を戦わせない、
君の笑顔がもう一度見たい、
そう願う僕の「祈り」として。




scene:24

「おもい・・・だした」

総士はフェンリルの作動開始キーを入力しようとしていた手を止める。

君だったんだ

あの日、一騎を亡くした僕が切り離して作り上げた記憶に付き合わせた。
総士の両目から涙が溢れる。

「僕を、許さないでいいよ」

君はずっと僕に呼びかけてくれていたのに、
僕はずっとそれに気付かない振りをしていたんだ。

「皆城君、一騎の生命反応が弱くなってきている、このままではフェストゥムにまもなく同化するだろう。
その前に、早く」

焦る真壁司令の声が聞こえる。
総士はきっ、と前を見据えると言った。

「嫌です。一騎は僕の『祈り』なんだ!!」

僕に、力を、貸して。

「今度こそ、君は、僕が、護る」

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