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蒼穹のファフナー文章(ときどき絵)サイト
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パラダイスロスト2
scene:7

「自殺できるくらい自由だったなら」

誰もいない屋上でひとりつぶやいた。
手をかけたフェンスの向こう側には自由な世界が風にゆれていて、
それはとても眩しすぎて僕は堪えきれずに両目を閉じる。
今日一日を生き続ける程度の気力すらなくて明日が真っ暗になればいいなと思う僕には、
夢や希望なんて言葉はいつのまにか風化して葬られてしまったんだ。
明日も生きていくレールならとっくに用意されている。
でもそれに疲れてしまっても立ち止まる事も逸れる事も許されない。
自分らしく生きる事なんてたぶんきっとずっと知ることはないんだろう。

「考えないように、してたのに」

僕がアナタ達の希望を叶えるロボットなら、悲しいことにそれでも僕は叶えて愛情を得ようとしてしまうけれど、
他人の歪んだ自己実現の犠牲でしか存在意義を感じられなくなる前に、誰かに息の根を止めてほしかったのに。

「都合のいい条件付きの休息は、もっと酸素不足になるだけだ」

窒息死寸前で飼い殺されて、アナタ達の思い通りに実現して生きていく事にどうしようもない吐き気を覚えているのに、
アナタ達の思い通りに生きないと全身に強い電流が流れて動作を無力化される。

右手に持った剃刀を軽く左手に滑らせる。
溢れ出る血はどんなトランキライザーよりも強力だ。

「深刻なエラー発生」

そしてアナタ達は子供という名の所有物の暴走で命を落とす。
そうして一瞬の解放を味わった後、人生の指針もレールも歪んだ愛情も失った僕もすぐに消えてしまうだろう。

「それで、いいんだ、きっと」

ロボットにだって感情はあった、けれど、ロボットはマスターがいなきゃ動けないんだ。

「なにやってんだ?総士」

「ん、ちょっと考え事だ」

「こんなとこで、風邪でも引いたらどうするの?」

「大丈夫」

「総士の大丈夫はアテになんないから」

手を引いて施設内へと入ろうとするのを、強引に足を止め
ることで止めてしまった。

「本当にどうしたの?」

恋愛ごっこ、なのかな、一騎。

「もし、僕が」

ああ、やっぱり、

「…好きだよ、一騎」

言える訳なんてない。
握り返した手にまた嘘を吐いたと罪悪感が一杯で溢れそうになる涙は本当に罪悪感だけなんだろうか。
振り返るだろう顔を予想して、下を向いて呼吸を整える。

「もう少し、ここにいよう」

全く総士は、なんて言いながらお前はそれでもこの命令には絶対逆らえない。
抱き寄せた温もりにほっとする。

「一緒にいてあげるから、キスしてよ」

何も言わずにそっと触れる、そうすれば深く濃度を上げていくのは時間の問題。
立っているのが辛くなったのか首に手が回る、だから背中をしっかりと抱き止める。
一騎が過多で酸素不足に陥った脳はもうほとんど何も考えられなくて、
このまま心臓まで止めてくれたらいいのになんて叶わない願いに切なくて一騎の髪をぎゅっと握った。

「…なんか積極的?」

「いいだろ、たまには」

一瞬なのに、一瞬だからこそ、余計キラキラして見えるのかな。
暗く歪んで捻れた世界しか知らなかった僕には、一騎が与えてくれるものが、光だった。

「もう1回、しよう」

「どうしたの?総士ってば」

「したくないのか?」

「じゃあ、遠慮なく」

でも、僕にはやっぱり、眩しすぎる。

「一騎、僕の事、好きか?」

「好き…だけど、どうしたの急に?」

「再確認しただけだ」

「それより、続き、したいんだけど?」

イタズラっぽく見上げてくる目に優しく微笑み返せばほら、続きはすぐ始まる。
また酸素不足に陥りかける頭のどこかで、オマエが光を浴びる資格など無いのだと誰かが警鐘を鳴らす。
解ってるんだ、そんな事痛い程に。
でもずっと憧れ続けていた光に手を伸ばしたらちょっとだけ届いた、ただそれだけ。
甘受なんてするつもりは無い、属性が違うのだから。
でも拒絶も、出来そうに無い。

甘く毒々しい麻酔薬で神様なんて殺せばよかったんだ。

こんな感情、死ぬ時に邪魔になるだけなのに。

「そう…」

言い終わる前に一騎の唇をまた塞ぐ。
今日がオカシイんじゃなくて僕は生まれた時からいつもオカシイんだアイツラを殺す事ばっかり考えてる、
なんて言えないから。

「どこにも、行くな」

「総士を置いてどこに行けるっていうんだ」

ねぇ、一騎。
たとえばお前が僕の事を好き過ぎたとして、
アイツラに執着する僕に狂うほど嫉妬して本当に狂って、そしてそのまま殺してくれたらいいのにね。

「本当に?」

「本当だよ」

僕は、こんなにも遠くに来てしまったから、
もうたぶん本当は君からなんて見つけられないはずなのに。

「じゃあ」

「何?」

「今日はずっとこのままでいよう」

「いいの?」

「特に仕事はないんだ、今日は」

「そっか、俺も実はくっついてたい気分だったんだ」

「寒いのか?」

「バカ」

抱きしめる腕に力が入った。

「?」

「もう一回、キスしていい?総士」

火曜日、快晴、午後3時。
嘘を重ね続けてきたのに、許されたいだなんて。





scene:8

作戦の確認も終わり、各パイロット達がそれぞれ自分の機体のチェックをするために司令室を後にする頃、
総士は一騎に呼び止められた。

「どうした?一騎」

まだ窓の外を見たままの一騎の元へ歩いていくと、総士は同じように窓の外を見る。

「たとえば明日、俺が俺じゃなくなったとして、それでも総士は俺を必要としてくれるか?」

総士は笑う。

「僕が裏切るとでも?」

一騎は目線を変えずに言う。

「プロポーズ?」

総士は座っている一騎の耳もとで囁く。

「してもいいの?」

一騎は椅子から立ち上がる。

「10年早いよ」

そう言って笑った一騎は、総士の手をとって歩きだした。





scene:9

総士の乗るジークフリードシステムの起動モニターにUNKNOWNのランプが点灯し、
やがて機影が映し出される。

「マーク…ザイン?」

総士は見慣れない白の最新型ファフナーのコックピットにパイロットの照合をかける。
やがて、COMPLETEの文字とともに表示された名前に言葉を失った。

「一騎!」
少し遅れて発進してき白いファフナーへと総士は専用回線にアクセスをかける。
すると、向こうが回線を開いた。

「総士、俺に構うより他のファフナーの指揮を」

「しかし…」

「心配するなって、俺専用のファフナーなんだ。詳しい事は後で説明するから。
今は数だけやけに圧倒的なフェストゥムの壊滅、だろ?」

「了解」

総士がジークフリードシステムから各ファフナーへと指揮をとり、凄まじいスピードで攻撃をしかけていったのを
確認すると、一騎は前方へ視線を定める。

「俺の相手はお前だ」

一騎は右目で先攻部隊の遙か後方に位置する大型のフェストゥムに狙いを定めると、対象までの距離、大きさ、
破壊力を瞬時に計算し演算式を機体へと転送する。
即座に左右のアームが変化をし始める、そのフィードバックがコックピット内のあらゆる液晶に表示され10秒も
立たない内に発射準備が完了した。

「死ね」

一騎は言うと同時にリンクシステムに接続した両手を握る。
すると、左右のアームから莫大な熱量の高波動砲が黒い放電を有しながらフェストゥムに向かい発射され、
一瞬で大爆発を起こす。

「何だ?…今の」

先攻部隊の指揮をとり、壊滅状態に陥らせた総士は一瞬の出来事に目を疑った。
モニターに発進源の特定をさせると、明らかに後方に位置する一騎の白い機体で、巨大化していたアームが元の形に
変形していくのが視認出来る。

「あんなエネルギー量をどこから?レアメタルの高化学反応を誘発させたのか?いや、あんな…大型を2体も落とせる
量をアームだけに集中させたら、駆動系統で暴発が起こるはず」

「大量のフィードバックに耐えうるハイスペックシステム、ニューロリンクしかない」

「しかし、超人的な演算式の入力が必要不可欠…でも、出来るよな、一騎なら」

総士は唇を噛みしめた。
一騎になら難なく出来る操作だ、けど全システムがニューロリンクに頼っているのだとしたら、フィードバックによる
直接負荷はジークフリードシステムの比になんてならない。
それだけではない、高波動砲を始めとするあの機体の攻撃の原動力が不可解すぎる。
開発部が最近かかりっきりだった研究はこのファフナーのことだったのかと、しかし、一騎が自分から制作を頼んだの
だろうか。

「前方2km先に高熱源確認、照準は竜宮島中心部、対象ロックされています、到達まであと10秒、避けきれません」

突如響いた緊急回線に総士は思考が止まる。
前方から来る高熱源は先ほど壊滅させたフェストゥム群よりも遥かに威力が大きいと算定されていて、
アルヴィスのフィールドを展開させても中心部は護りきれない。
動けない総士のモニターの前に突如、一騎の乗る白い機体が現れた。

「総士、エネルギー到達測定可能範囲から即座ファフナー全機に離脱させて」

「一騎!お前…どうする気だ!」

「時間がない、早く」

「わかった」

一騎は迫り来る高エネルギーの攻撃線上にアームと背の4射を集中させる、そして冷静に対象の攻撃力を算
定すると、ニューロリンクシステムへと演算式を転送した。
到達まであと5秒、急速に変化を始める6射のフィードバックを全面の液晶で確認し、モードを迎撃+撃破に設定する。

「そんなもので竜宮島が壊せると思ったか?」

一騎は笑みを浮かべ、リンクシステムに接続された両手を力の限り握りしめた。

「一騎っ!」

既に離脱した機体を確認すると総士が叫んだ。
激突する黒と白の膨大な光線、拮抗する2つの光線だったが、次第に黒い光線の量が増して包みこんでいく。
そして完全にエネルギーを包含し、一瞬にしてそれは無力化され次の瞬間には消滅した。










「…っ!クソ、なに…これ」

脳に膨大な情報が流れ込む感覚、リンクシステムに接続している頭部と両手から絶え間なく大量の電気刺激が起こり、
一騎は身体感覚の殆どが奪われて意識が朦朧とする。
与えられる一方の情報の波を遮って帰還にプログラムを書き換えるとそのまま意識を失った。






「一騎、聞こえるか、応答しろ!」

突如島に帰還し始めた白い機体に総士は必死に呼びかける。しかし、機体から回線を開かれる様子は無く
そのまま格納庫へと着艦した。
総士はすぐにジークフリードシステムを降りると、リフトを使って一騎の機体へと上りコックピットのハッチを開けよ
うとする。が、REFUSEの文字が外側に浮かび上がり、その扉が開く気配は無い。

「マスターキーを差し込まないと開きませんよ」

そう言って研究員はキーを差し込むとハッチを開けた。

「過負荷による意識喪失ですね」

その先にはシートにぐったりと身を預けている一騎。その頭部と両手がリンクシステムに接続されているのを総士は見て
研究員に問いつめた。

「ニューロリンクシステムは危険だって…」

研究員は表情を変えずに言う。

「パイロットの了承済みです」

「パイロットの負担が大きすぎます!それに、一騎はもともと体が」

「彼が自ら望んだ事を、友人でしかない貴方が阻止なんて出来るのですか?」

「…っ、それは」

総士はコックピット内に入ると、システムを外部から強制的にスリープ状態にする。青白く浮かび上がる全体が、
不気味でたまらない。意識のない一騎を抱き上げると研究員に向かって言った。
研究員は一瞥する。

「それより、一騎君をメディカルルームに連れて行った方がいいのでは?」

一騎は眉根を寄せたままで目覚める気配はない。

「何が、起こってるんだ、一騎…!」

何が、起こってる?
戦局は激しさを増す一方で切り札となるような新型ファフナーの投入、総士は心の奥で疑問を抱かざるを得なかった。

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