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蒼穹のファフナー文章(ときどき絵)サイト
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らぶらぼ4
「総士、休憩しよ?」

一騎はにっこり微笑むと、両手に持っていたアイスキャンディーの一つを差し出した。



















「お前なぁ、さっきから何回休憩してると思ってるんだ?」

総士はあからさまにイラっとした目をこちらへ向けている。
これは怒ってるよねぇ、と一騎は内心ものすごくびびりながらも、んーと、1時間前?
などと必死にとぼけてみせた。

「確かに1時間前だ、けどな、お前それから何分ここにいたと思ってる?
出てったのたった10分前だぞ?で、10分経ったらまた休憩って、
大体、そんなものアルヴィスには売ってないだろう?お前サボって買ったのか?」

まずい、完璧に怒ってるよ、まずい。
総士からは明らかに目に見えるように怒ってますオーラが漂っている、
というかなんだか攻撃されているような気分だ。
でもそれは誤解だ、と勇気を振り絞る。

「違うってば!!これ、整備のおじさんに貰ったの」

一騎は首をぶんぶん振って否定した。
総士はチラとこちらを見やると盛大に溜息を吐く。

「あのなぁ、知らない人から物貰っちゃいけないって何度言ったら・・・」

ぶつぶつと総士が小言をたれる。
ここまで完璧に否定され続けるとなんだか涙もろくなってしまうのが一騎の弱点といえば弱点で、
今回も例にもれずその両目には涙がたんまりと溜まり始めていた。

「ちょ、おい・・・泣くなって」

今日暑いだろ、これ食べなさい。

ぼけっと格納庫を歩いてたらいきなり目の前にアイスキャンディーが2つ。

あ、ありがとうございます!

確かにクーラーの利いてない格納庫はうだるような暑さで、
そのささやかな贈り物はだるくて仕方なかった一騎にとってはありがたかった。
でも、なぜ2つ・・・
両手に持ったアイスキャンディーをしばし見つめた一騎はハッと気付いてお辞儀をすると、
エレベーター目指して一目散に駆けだした。

転ぶなよ。

と背後で苦笑する声があちこちから聞こえたが気にも留めなかった。
ま、実際コケもしなかった。たぶん愛の力だ(?)

それはさておき、ファフナーで戦うだけの自分と違って、
朝からぶっ続けで仕事をしている総士はきっと疲れているに違いない、
だからもう一つは総士にあげよう、絶対、喜んでくれる筈だ。
そう思って総士の部屋のドアを幸せいっぱいに開けた一騎だったが、現実はそうも甘くはなかったようだ。

と、痛感した。

「・・・そ、しは、たべもの、むだに・・・するのかよっ」

涙をぼろぼろこぼしながら言う一騎に気圧されて総士はその手からアイスキャンディーを取ると、
未だドアの前で泣きじゃくる一騎をばこっと部屋の中に入れた。

「僕が、悪かったから・・・とにかく座れ、一騎。休憩しよう」

そう言うと総士はベッドに座る一騎の横に座った。

ペロ、ペロペロ・・・ペロ、ペロリ。

な、なんか気まずいし!
と一騎は無言のまま食べ始めてしまった自分に激しく後悔した。
なんで泣いちゃうんだよ、俺。
これじゃ総士を困らせたいだけみたいじゃんか。
違う、違うんだって、俺、総士のためを思って・・・

ありがと、一騎、お前、気が利くな。

そ、そんなことないって、当たり前だよ、こんなの///

・・・とかって甘い会話を(!)
くそぅ、何がいけなかったんだ俺。

って、ちょ・・・ちょっと待って!!
隣の総士ってば、

「も、もう食べ終わったの?」

聞けば、ああ、って返事をしながら総士がこっちを向いたかと思うと、
総士の綺麗な(←妄想)指がこっち伸びてきて、


ひょ・・・!?


く、くちびるですか!?


総士の親指が一騎の唇をすっとなぞった。
一騎は一瞬の事に元から弱い頭がさらに弱って固まる。
しかも、

「いっぱいついてるぞ?口の周り」

と言ってその親指をペロっと舐めた。


な、ななな、なめ・・・なめ!?


弱りまくった頭はついに思考停止し、一騎は訳がわからなくなって残りのアイスを一気に口に入れてしまった。

途端に、眉間から脳天に突き上がる嫌って程冷たい感覚。

きーーーーーーーーー・・・ん

う、と一言発したきり、一騎は頭を押さえてうずくまってしまう。
いたい、つめたい、いや、いたい。

いたいよ、総士。

なんて言えないけど言いたい程痛くて一騎はうずくまったままぼろぼろと涙をこぼした。
次の瞬間、

「ほんとバカだな、お前」

という声が聞こえたかと思うと、頭を押さえていた腕ごとふわっと何かに包まれる感触。

あったかい。

なんてぽけっと思っていたら目の前には白と紫のコントラストで・・・

・・・?
・・・制服?

てことは、

そ、総士に抱きしめられちゃってるわけ?俺

わーーーっ!わーーーーっ!わああああああっ!!(心の中)

一騎はいてもたってもいられなくなってもぞもぞと総士の腕の中で動いた。
しかし総士は、

「ちょっと大人しくしてろって、すぐ治るから」

頭、痛いんだろ?一気に食べ過ぎなんだよお前、と言ってぎゅうぎゅうと抱きしめてくる。
別の意味で大人しくなんてしてられなかった一騎だったが、
これ以上総士の機嫌を損ねるのはとんでもなかったのでちょっと大人しく腕に収まってみた。

・・・どど、どきどきすんなよ俺。

必死に鼓動を落ち着けようとしても無理っぽい。
一騎はハチキレそうな鼓動と思いを抱えたままぎゅ、と目を瞑って待った。

ぽふぽふ。

「そろそろ、大丈夫か?」

総士が一騎の髪を優しく撫でる。
一騎は瞑っていた目を開けると、がばっと飛び起きた。

「ご、ごめんっ・・・!!」

一騎がなかなか顔を上げられずにいると、頭上でフと笑った声がする。
そろそろっと目だけ上を向かせると、総士が一騎を見てふわっと笑っていた。

「実は、ちょっと疲れが溜まってたんだ」

総士は苦笑すると続けた。
からん、とアイスの棒が捨てられたゴミ箱が音を立てる。

「だから、甘いもの食べて、ちょっと元気が出た」

今度こそ一騎が顔を上げると、総士は一騎を見てふっと笑う。

「ありがとな、一騎」

と言った時の笑顔がそれはもう一騎には眩しすぎてなんだか冷たさの余韻もあってか頭がくらくらしてくる。

「そんなこと、ないってば・・・///」

俺こそ、邪魔してごめん、と小さく呟いた。
すると、総士は言った。

「こういうのなら、大歓迎、かな?」

その笑顔がさっきよりもキラキラ眩しくて本当に頭がくらくらした一騎は、
じゃあ俺っ、もう行くから、と言い残して部屋を出た。

が、どうも刺激が強すぎたらしくその場にへたり込んでしまった。

「一騎くん、どうしたの・・・そのカッコ?」

偶然通りかかった真矢が一騎に声をかけた。

暑いからといって前を肌蹴させたままの上着、取れかかったスカーフにぼさぼさの髪の毛・・・

・・・あ(汗)

「こ、これはっ!そのっ、暑かった、からっ」

一騎はなんか変な方向に誤解されてそうな真矢に必死に説明した。

が、

「格納庫じゃあるまいし、アルヴィス内はクーラーきいてるよ一騎くん」

妙にニヤニヤした真矢はその場にしゃがむと一騎の耳にそっと囁いた。

「怖くなって逃げだしちゃった?」

と一騎の胸をつんと人差し指で突く。
違う、違うって、とぶんぶん首を振る一騎に、

「皆城くんの部屋の前でそんなカッコしちゃってさ(笑)」

と、トドメの一撃をお見舞いしてから立ち去った。

「バカ真矢」

一騎は真矢の消えた方向を見つめて呟いた。



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らぶらぼ3
暗く低い雲が立ち込めた空からはひっきりなしに雷鳴が轟き、
数分前まで小降りだった雨はやがて土砂降りに変わった。
通り雨だろうと高を括った自分に溜息をひとつ。
今日の朝は忙しくて、つい天気予報を見ることをせずに家を出て来てしまった。

「遅刻、確実だよなぁ」

一騎は何度目になるかわからない溜息を吐いては時計を
見上げる。
今日の放課後は、アルヴィスにてマークエルフの戦闘シミュレーションを行う予定だ。
本当なら、今頃すでにアルヴィスに着いて総士の部屋に行き、

「お弁当、作ったんだけどなぁ」

手作り弁当を渡す予定だった。
3人分のお弁当を作っていたから、ついつい天気予報を疎かにしてしまった自分に心底嫌気が差してくる。

これじゃあ、怒られるのも確定だよ。

集合時刻まであと5分、一騎はいまだ学校の教室で泣きそうになりながら空を見つめていた。

















「やっぱりここにいたか」

ぼんやり恨めしそうに暗雲立ち込める空を見上げていた一騎だったが、
不意に背後から聞こえた声にびっくりして振り向いた。

「そ・・・し?」

教室の入り口には、総士が立っていた。

「あ、ご、ごめんっ!!今行こうと思って・・・」

まずいっ・・・!
雨に気を取られてたらぼけっと座りこんじゃってたよ。
どうしよ、とりあえず、

ガタンっ!!

と勢いよく席を立ってみたものの、慌てすぎたのがいけなかった。

「ほわ・・・ぁ!?」

急に視界が反転し、身体が平衡感覚を失う。
うわ、足ひっかけてコケるとかかっこわる・・・

「ぇ・・・え?」

数秒後にぶつかるであろう床の固い感触に身構えていた一騎だったが、いつまでたってもその衝突は訪れず、

「そそそ、そぉしぃっ!?」

「ったく、危なっかしいな、お前」

駆けつけた総士にしっかりと抱きとめられていた。
ぽふっと押し付けられた胸は、きっちり着込まれたアルヴィスの制服で、
なんだか微かにシャンプーの香りがしてすごく安心する。

・・・っといけないいけない、いけないぞ俺!

一騎は慌てて総士の胸に手をついて押し返す。

「ご、ごめんっ!だいじょ、ぶ、だから」

でも間近にあると思われる総士の顔を直視できる自信がないのでうつむいたまま。

「お前、気分、悪いのか?」

総士はうつむいた一騎の顎に手を掛けて上を向かせると心配そうな顔で見つめた。

だから顔近いんだってばっ・・・!!

一騎はばくばくしてる心臓と上がってしまう呼吸を抑えながら、「あ!」と思い出す。
ごそごそと机の横にかけてあったバッグを引き寄せると、中から赤チェックの巾着袋を取り出した。

「ここ、これ、作ったんだ」

一騎は真っ赤になりながら総士に巾着を持った手をぎゅ、と差し出す。
総士はそれを受け取る。

「これ?」

総士は首を傾げた。
一騎はぱくぱくと口を開け閉めしながら言った。

「お、お弁当・・・総士、ちゃんと食べて、ないだろ?」

その、味は保証しないけど、と呟いて一騎は恥ずかしさに耐えられずうつむいてしまう。
すると、ぽふ、と頭に手の感触。

「ありがとう」

おそるおそる見上げると、そこには優しく微笑む総士の顔。

うっわぁ、キレイだなぁ。

なんて見とれてる場合じゃなくて、俺。
ぼけっとしてたらまたぽふぽふ、と頭に感触。

「手作りなんて、久しぶりすぎて、うれしいな」

微笑む総士がぽつりと言った。

「もしかして、これ作ってて傘、忘れたとか?」

「う」

一騎はいたたまれなくなって目線をずらす。

「じゃあ今日の遅刻は僕の責任だな」

え?と一騎が総士を見ると総士はウィンクをしてみせた。

あ、ぇ・・・今の、何だよ。

一騎がぽかんと立ち尽くしていると、総士は「ほら早く、もう行くぞ」と言って一騎の背をぽんと叩く。
一騎は慌ててバッグを取ると、総士の後を追った。
下まで降りると総士は傘を開いて待っていた。
しかし、まさか一騎が傘を持っていないとは思わなかったらしく、
「ごめん1本しかないんだ、ちょっと濡れちゃうと思うけど」
と申し訳無さそうに笑ってくいくい、と手招きをする。
一騎が駆け足でその傘の中に入ると、総士は「こうしてくっついてたほうが濡れないから」と言って、
自分の腕を一騎の腕に絡ませた。
それはもうかなり恥ずかしくて一騎がまたうつむいていると、総士はぽつりと言った。

「毎日、こんなお弁当作ってもらえる真壁司令は幸せ者だな?」

「じゃ、じゃあ、総士にも毎日作ってやるよっ・・・///」

マズ・・・反射的に言っちゃった。
一騎がどきどきしているのなんてつゆ知らず総士は続ける。

「大変じゃ、ないか?」

「ただし、味の保証はしないかんなっ///」

くそぅ、そんな反則的な声で隣で言うなよっ。
一騎は顔を真っ赤にしながら総士の顔を見た。

ら、

「じゃ、幸せ者だな、僕も」

だなんて総士がにこにこ言ったものだから、それはもう鼻血が吹き出すかと思ったくらいびっくりして。
同時に、鼻血が吹き出そうなくらい思った、

しあわせかもしんない

と。

(でも俺が思う好きって気持ちとかとは、違うんだろうけど・・・ま、ちょっと前進かな?)

と、一騎は絡めた腕にぎゅうっと力を込めた。
アルヴィスまではあと少し、依然として止む気配を見せない土砂降りの雨。
一騎はほくほくしながらその道のりを歩いていた。

濡れた制服を乾かす総士の上半身に鼻血が吹き出すくらいどきどきしたのは、このちょっとあとの話。

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らぶらぼ2
「あ・・・え?」

一騎は何回も瞬きをすると、目の前に迫っている光景に固まった。


















な、何でこんなことになってるんだ!?

一騎はいまだぼうっとする頭をフル回転させて考える。
確か、さっきまで戦闘で、ファフナー降りて、メディカルチェックを受けようと・・・

してたはずだけど。
何で平衡感覚がおかしくなったんだ?

「一騎、だいじょうぶか?」

何で、総士に抱きかかえられちゃってるわけ?俺

「あっ・・・れ?俺」

全く思考がついていかず、この上なく舌足らずな喋りをぶちかましてしまう。
総士はそれはそれは心配そうな顔をして一騎を覗き込んだ。

「いま、メディカルルームに運んでやるから」

俺は今までどこにいたんだ?
一騎が?マークを目一杯飛ばしていると、総士は悲痛な面持ちで答える。

「お前、そこの廊下で倒れてたんだ、覚えて・・・ないか?」

たお・・・たおれた!?俺が?この健康優良児の俺が?
一騎は更に?マークを飛ばしまくる。
それを何か勘違いした総士は眉根を寄せたまま続ける。

「ごめん」

一騎はこれ以上ないくらい目を見開いた。

「気付いてやれなかった・・・こんなに、苦しかったのに」

総士の両目にみるみるうちに涙が溜まる。

「あの・・・そ、し?」

一騎は目をぱちくりさせながら恐る恐る尋ねる。
総士は一騎を抱えたまま俯いた。
色素の薄い綺麗な長い髪が一騎の顔と肩にさらさらと触れる。

あ、ちょ、これやば・・・なんか。

一騎は一気に顔がかーっと熱くなっていくのが判った。

「一騎、顔、赤い。熱でもあるのか?」

と、これまた勘違った総士はうるうるした目で一騎を見つめてくる。
え、ちょ、総士?なんか顔が近付いてきてるような・・・

「・・・っあ(///)」

おでこが!!!
おでこが触れ合ってるんですけどっ!!!
き、ききき

(キスする時ってこんな近いんだよな)

とか変な事思ってる場合じゃなくって、俺。

「一騎、つらいか?」

はい、何かたぶんすごく別の意味で。

単純に心配してくれている総士の思いなどそっちのけで一騎は自分の欲望に素直だった。

「んぁっ・・・ぅ」

ら、妙な声を出してしまった。
ずっと口を半開きにしていたせいで唾液が足りなかったらしく全く言いたい単語の発音になっていなかった。
「違う」って、言いたかったんだけどな。
一応、その、総士が心配してるような意味では。

総士はそれはもう辛そうに一騎の顔を見ると、一騎の思いなどそっちのけで言った。

「早く、良くしてやるからな?」





うああああああっ(叫べないけど)


一騎は一向に伝える事なんて出来ない気持ちと抑えきれない元気な欲望に耐えきれず、思わず涙を流してしまった。
運悪く総士と目が合ってしまい、いたたまれなくなってぎゅ、と目を瞑る。
それを「涙を流すほど苦しくて意識を手放してしまった」と、
ある意味正しく受け止めた総士は足早にメディカルルームを目指した。

心地良い振動に揺さぶられながら一騎は思った。

そういえば、どうして俺って倒れたんだろう?

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らぶらぼ1
「うあああっ、もうやだやだ!」

火曜日、2限目、雲一つない快晴。
一騎は屋上でひとりじたばた叫んだ。

澄み切った青い空がなんだか恨めしい。
中学生とは実に悩みの多いもので、例に漏れず一騎もずぶずぶとハマりまくっていた。

悩みとはそう、昨日の戦闘の時の事である。
いつものようにフェストゥムと戦っていた一騎だったが、少々押され気味だった。
そこへジークフリードシステムの総士から声が響く。

「一騎、もっと僕を感じるんだ」

その瞬間、ふわっと自分の身体の中に自分じゃないものが侵入して一体化する感覚。
耳元ではなく頭の中に直接響く総士の声。

「そ・・・うし?」

ひとつになるんだ、と頭の中で総士が言った。

その途端、見違える程動作のキレが良くなったマークエルフは、フェストゥムを瞬殺したらしい。

と、後で父親に聞いた。
言えるはずなかったけど、実は、いまいちそれからの記憶がはっきりしていない。

「総士って鈍いくせにさぁ」

とてつもないエロ爆弾を投下するのだ、戦闘中に。
その瞬間は、確かに自分も戦闘に集中してるから、ぼーっと、いわゆるされるがまま(←主観的に)状態なのだが、
フェストゥムを倒してさぁ帰るかと思った時にどばーっと、かああああーっと頭の中がピンク色で埋まるのだ。
おまけに、よく頑張ったな、身体、辛くないか?なんて声を掛けてくるもんだから、
なんかもうそれは「事後の会話」っぽくて余計恥ずかしくなったりする。

こんなに、総士の事が好きなのに。

しかし当の本人は全くそんな気持ちには気付いていない。
いや、気付いていてあんな言葉責め(←主観的)するんだったらかなりのSだ。や、Sでもいいけど(?)

ぐるぐるぐるぐるした一騎は、はぁ、と大きな溜息を吐いた。

「ひとつになりたいよ」

肉体的な意味で。

思春期の健全な男子の脳内に、「サボり」という言葉は存在していないようである。















「一騎くーん、またこんなとこでサボってたの?」

15分後、授業が終わったらしい真矢が屋上に来た。
一騎は浮かない顔で言う。

「それどころじゃないんだって」

真矢はノートをぽん、と一騎の顔に被せる。

「一騎くんの場合、勉強の方がそれどころじゃないと思うよ、はいこれ数学」

一騎はノートを取ると起き上がった。

「いつもありがと」

真矢は笑う。

「どうせまた皆城くんのこと考えてたんでしょ?」

「う」

一騎の困った顔を見て真矢は肩をすくめた。

「言っちゃえばいいのに」

真矢は空を見上げて笑う。

「うう」

一騎はうつむく。

「まぁ、鈍すぎるもんね、うん、わかるよ、ちょっとだけ」

真矢は一騎の頭をなでなでする。

「応援してるよ、私は」

「・・・ありがと」

二人の上の空はやっぱりどこまでも青かった。

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もうひとつの一騎BD記念
「誕生日おめでとう、一騎」

操は一騎の後ろ姿に向けて言うと、一騎は立ち止まってゆっくりとこちらを振り返る。
「操?」と視線をさまよわせる彼に歩み寄ると、操はその手を取った。
思わずびくりと震えた一騎に操はくすりと笑うとまた口を開く。

「何か、おかしなこと言った?」

「…そうじゃ、ないけど」

「びっくりした?」

返答につまる一騎を見て操はまた笑うと、「はじめてだよね」と言う。
焦点が今一つ合わない一騎の目に自分の目線を合わせると心なしか一騎の瞼が揺れる気がする。

「一騎の誕生日」

もちろん一騎にとっては17回目なのだけれど、操がここに来てからはこれが初めてだった。
「あ」と言いたげに口を開いたままの一騎に操はまた問いかける。

「教えてくれても、よかったのに」

一騎がもともとこういうことに無頓着なのは何となく感じていたけれど、
他の皆が当然のように知っていることを自分だけ知らないという事実が、
なんだか操には面白くなかった。

「僕だって嬉しいんだよ、一騎が生まれてきてくれたことが」

その心の中の大部分を占めている存在にだけ祝福されればいいなんて思えない。
けれどその存在を消すことも自分には叶わないから、
なんとなく精一杯の抵抗のつもりで「自分も」なんて言葉を告げてみる。
心の中を見透かされたような気持ちになったのか、案の定一騎は視線をより一層さまよわせている。
違うんだって、と操はため息をつきつつまた口を開いた。

「困らせたいわけじゃないんだって」

そう言って操は一騎の手を両手で包み込む。
思いの外ひんやりとしていた指先に操は驚きつつも、ぎゅと少しだけ両手に力を込めた。

「誕生日なんだからさ、おめでとうって言うの普通でしょ?」

だからさ、おめでとう。
改めて操は一騎に告げると、やっと一騎は表情を緩めて小さく「ありがとう」と呟いた。

「なーんか、やっぱり強敵だなぁ」

「え?」

「ここにいなくたって、こんなに一騎のこと束縛しておけるなんてさ」

「操?」

「皆城総士」

「なんで、総士?」

「うらやましいなぁって、思っただけ」

「総士のこと、そんな気になるのか?」

「いや、どっちかっていうと、一騎なんだけど」

「…俺?」

「あーもうさ、だからなんか色々、一騎のことが気になるの」

「操?」

「あーだからそうやって首とか傾げないで、ほんとに」

「って言われても」

「困った顔しないでってば」

「え?」

「もーほんとさ、だめだ」

「何が?」

「全部」

「は?」

「ある意味、皆城総士って尊敬に値するべき存在なのかも」

「何言ってんの、操」

「ん、一騎にはたぶん、きっとわかんないかも」

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